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back.gifスゥザンナ(古ギリシア語訳)


原始キリスト教世界

スゥサンナ(テオドティオン訳)





[解説]
  [底本]
TLG 0527 055
Susanna (Theodotionis versio)
Apocryph., Narr. Fict., Relig.

A. Rahlfs, Septuaginta, vol. 2, 9th edn., Stuttgart: Wûrttemberg Bible Society, 1935 (repr. 1971): 864-870.


スゥサンナ

(1) そしてバビュローンに住む男がいた、その名はイオーアキム〔ヨアキム〕。(2) そして妻を娶り、その名はケルキアス〔ケルキア〕の娘スゥサンナといい、すこぶる美しく、主を畏れる女であった。(3) 彼女の両親も義しい者たちで、自分たちの娘をモーゥセースの律法にしたがって教育した。(4) またイオーアキムはすこぶる裕福で、自分の家に隣接して庭園を所有していた。また彼は誰にもまして評判のよい人物だったので、イウゥダイオイ人は彼のお近づきとなった。(5) さて、その年、二人の長老が民の中から裁判員に任命されたが、こ〔の二人〕については、主が「バビュローンから、民を操舵すると思われた長老たちなる裁判員から不法が出来した」と述べられている者たちである。(6) この連中はイオーアキムの家に入り浸り、裁きを求める者たちはみな彼らのもとへやって来るようになった。(7) そこで、日中になって民が帰ったときに、スゥサンナが入って来て、自分の夫の庭園を散策するようになった。(8) ところが二人の長老は、彼女が毎日入って来て散策するのを目にし、彼女に対する欲情にとりつかれた。(9) そして自分たちの理性を歪め、自分たちの目を背けて、天を凝視しないのはもちろん、義しい裁きを心がけることさえしなくなった。(10) そして両者とも彼女のことで悶々としていたが、自分たちの苦しみを互いに告げることはなかったのは、(11) 彼女と合歓したいと、自分たちの欲望を告げることを恥じたからである。(12) そして毎日、彼女を目にする機会を熱心に窺っていた。(13) さて、〔或る日のこと〕一方が他方に云った、「さあ、屋敷に帰ろう、昼食の刻限だから」。そして出ると、互いに分かれた。(14) ところが〔二人とも〕同じところに引き返して来たので、その理由を互いに問いただして、自分たちの欲情を告白した。それからは、いつ彼女がひとりになるのを見つけ出せるか、いっしょになって機会を窺うことになった。(15) そして彼らが窺っているときに、都合のよい日がやって来た、このとき、昨日一昨日のごとくただ二人の小女を連れてやって来て、暑い日だったので、庭園で沐浴を欲したのだ。(16) そしてそこには、隠れ潜んで彼女を窺っている二人の長老以外には誰もいなかった。(17) しかも〔彼女は〕小女たちに云った、「さあ、オリーブ油と香油をわたしに持って来ておくれ、そして庭園の扉は閉めておいておくれ、沐浴できるように」。(18) そこで〔小女たちは〕彼女が云ったとおりにし、庭園の扉を閉め、自分たちにいいつけられたものをもってくると、潜り戸を出て行ったが、長老たちには気づかなかった、隠れていたからである。(19) かくて小女たちが出て行くことになり、二人の長老は起ちあがり、彼女のもとに走り寄って (20) 云った、「見よ、庭園の扉は閉めら れている、わしたちを見ている者は誰もいない、わしたちはそなたが欲しいのだ。だからわしたちに同意し、わしたちのものになれ。(21) さもなければ、『若い男がおまえといっしょにいた、だから小女たちをおまえのところから追い払った』と、おまえに不利な証言をしてやる』」。(22) そこでスゥサンナは嘆息して云った、「わたしはどちらを向いても窮地。もしこれをすれば、わたしにとって死、もししなければ、あなたがたの手を逃れられますまい。(23) わたしにとって選ぶべきは、主の前に罪を犯すよりは、せずして、あなたがたの手に落ちた方がましです」。(24) そうしてスゥサンナは大声をあげて叫び立て、二人の長老もまた彼女に向かつて大声を上げた。(25) そして一人〔の長老〕は走って行くと、庭園の扉を開け放った。(26) そこで庭園での叫喚を聞きつけて、家の者たちは彼女に何かあったのか見るために、潜り戸から中に駆け込んで来た。(27) そこで長老たちは自分たちの作り話をしたので、家僕たちは非常に恥ずかしい思いをした、スゥサンナについてのそのような話はそれまで一度も言われたことがなかったからである。

(28) さて、翌日、民が彼女の夫イオーアキムのもとに集まることになり、二人の長老は、スゥサンナを死刑にせんと、彼女に対する不法な意向に満たされてやって来て、(29) 民を前にして云った、「ケルキオスの娘にして、イオーアキムの妻であるスゥサンナを呼びに遣れ」。そこで〔人々が〕呼びに遣った。(30) そこで彼女、その両親、その子どもたち、その親族もみなやって来た。(31) スゥサンナはすこぶる優雅で、容姿美しい女性であった。(32) しかし無法な者らは、彼女に(すっかりベールを被っていたから)被り物を脱ぐよう命じた、彼女の美しさを堪能するためである。(33) それで、彼女の身内の者たちと彼女を見る者たちは泣いた。(34) しかし二人の長老は、民の中に起ちあがって、両手を彼女の頭の上に置いた。(35) 片や彼女は泣きながら天を凝視した、彼女の心は主を信頼していたからである。(36) しかし長老たちは云った、「わしらだけで庭園を散策していると、こやつが二人の侍女をともなって入って来て、庭園の扉を閉め、侍女たちを下がらせた。(37) すると若い男が、こやつは隠れていたのじゃが、彼女のところにやって来て、これと横になったのじゃ。(38) わしらは庭園の隅にいたのじゃが、不法行為を目にして、これらの者のところに駆けつけた。(39) そして、これらの者が交合しているのを目撃し、一方は引っ捕らえることができなんだ、そやつはわれらよりも力が強く、扉を開けて走り去ってしまったからじゃ、(40) しかしこの女の方は取り押さえて、若い男が何者か問い質したが、われらに告げようとはせなんだ。以上、われら証言する」。そこで会堂は、彼らが民の長老にして裁判員であることから彼らを信じ、彼女を死刑と断罪した。(42) すると、スゥサンナは大声を上げて云った、「永遠の神、隠された事の知者、万物の誕生する以前から万事をご存知の方よ、(43) 御身は、彼らがわたしの不利になるよう虚偽を証言したことをご存知です。そして見よ、この方たちがわたしに対して邪悪な振る舞いに及んだ事柄の何ひとつしないまま、死刑になるでしょう」。

(44) すると、主は彼女の声を聞き入れたもうた。(45) つまり、彼女が処刑されるため引かれ行くとき、神は、その名をダニエールという若き子の聖霊を目覚めさせ、(46)(46) そこで彼は大声で叫んだのである、「わたしはこの女性の血について責任はない」。(47) そこで民は彼の方を振り返って云った、「おまえが口走ったその言葉は、どういう意味なのだ?」。(48) そこで彼は彼らの真ん中に起ちあがって云った、「かくも愚かなのか、イスラエールの息子たちよ。尋問しないばかりか、真相を知りもせずにイスラエールの娘を断罪したとは。(49) 裁きの座に戻ってください。この者たちは、彼女に不利な証言をしたのですから」。(50) そこで民はみな急いで戻った。すると長老たちが彼〔ダニエール〕に云った、「こっちへ、われわれの真ん中に座れ、そしてわれわれに告げよ、神がおまえにいかなる長老の特権をお与えになったか」。(51) するとダニエールが彼らに云った、「この連中を互いに遠く隔ててください、そうすればぼくが彼らを尋問しよう」。(52) そこで一人を一人から隔てるや、彼らの一人に命じて、これに向かって云った、「悪の日々を歳古りきた者よ、今こそおまえの罪が襲来した、今までおまえが為してきたこと —(53) 不正な裁きをし、罪なき者らを断罪し、犯人たちを放免してきた — 罪が、主がこう言っておられるにもかかわらず、『罪なき者・義しき者を殺すべからず』と」。(54) そこでいざ、この女を見たとするなら云え、《何の樹の下で彼らは互いに交わりあっていたのか》」。すると相手が云った、「scinovV(ピスタキオ〔Dsc.I-89〕)の下に」。(55) そこでダニエールが云った、「まさしくおまえ自身の頭において嘘をついた。なぜなら、神の天使が神から告発を受けて、おまえを真っ二つに引き裂かれよう(scivzw)から」。(56) そしてこの者を下がらせると、別の者を連行するよう命じた。そしてこれに云った、「カナアンの裔にしてイウゥダ人ならぬ者よ、美しさがおまえを欺き、欲情がおまえの心を背かせた。(57) このようにイスラエールの娘を扱い、彼女たちも恐れからおまえたちと交わってきた、ところがどっこい、イウゥダの娘がおまえたちの不法を我慢しなかったのだ。(58) そこでいざ、云ってくれ、《何の樹の下で彼らが互いに交わりあっているのを捉まえたのか?》」。そこで相手が云った、「pri:noV〔コナラ(Dsc.I-144〕)の下で」。(59) するとダニエールが彼に云った、「まさしくおまえも、おまえ自身の頭にかけて嘘をついた。神の天使が大剣を持って、おまえを真っ二つに鋸挽きにすべく待機している、おまえたちを根絶やしにしてくれようとて」。(60) そこで全会衆は大声で歓呼の声を上げ、自分〔神〕に希望を托す者たちを救いたもう神をほめたたえた。 (61) そして彼らが二人の長老たちに対して反抗したのは、彼ら自身の口で、彼らが偽証していたことをダニエールが立証したからであり、かくて〔人々は〕彼ら〔二人の長老が〕隣人を虐待した仕方で彼らを扱い、(62) モーゥセースの律法に従って、彼らを処刑したのである。かくてこの日、罪なき者の血 が救われたのである。(63) ケルキアスとその妻は、自分たちの娘スゥサンナの件で、その夫イオーアキムと親族の者たち全員とともに、神を讃美したのは、彼女に恥ずべき行いが見つからなかったからである。(64) また、その日以降、ダニエールは民の前に偉大な者となった。

2018.09.07. 訳了

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