石原莞爾フォーラム
No.134
Date:2000.1.14 7:59 PM
Subject我々は今最終戦争時代に生きている 2
ハンドルネーム:砂原慶之助
Name:(匿名)
E-mail:(匿名)
発言: 中村光三さんは、<石原将軍は最終戦争論を著わしています。しかし実際には旧ソ連の崩壊で最終戦争は回避され、将軍の考えるようには進まなかったと考えて良いのではないでしょうか>と大変大きな問題を投げかけました。これについて、私なりの考えを申し上げます。

 先ず第一に考えなくてはならないことは、最終戦争論を著わした石原将軍が、最後まで最終戦争の到来を主張したかどうかです。実は、将軍は昭和20年8月の敗戦を境に今までの主張を全面的に撤回し、新たな方向を提示しました。一言で言えば、最終戦争必然論を撤回し、最終戦争回避論を新たに展開したのです。今まで「最終戦争に勝て」と言ってきたのに、今度は「最終戦争を回避しろ」と言い始めたのです。これは正にコペリニクス的転回といっても言い過ぎではありません。「君子豹変す」とはこのことでしょうか。
 戦争中将軍は
 「人類歴史の最大関節たる世界最終戦争は数十年後に近迫し来たれり。昭和維新とは東亜諸民族の全能力を綜合運用してこの決勝戦に必勝を期することに外ならず」(『昭和維新論』昭和14年8月)
と宣言しました。これは正に最終戦争必然論です。この宣言は東亜連盟の同志によって敗戦の時まで朗唱されていました。
 ところが将軍は、太平洋戦争敗戦の報を聞くや直ちに「敗戦は神意なり」とし、
 「大東亜戦争の敗北によって夢を破られた我等は、ここに翻然として目覚め、最終戦争に対する必勝態勢の整備は武力によるべきにあらずして、最高文化の建設にあることを悟ったのである。…敗戦によってこの貴い悟りを得た我等は心から神恩に感謝せざるを得ない」(『新日本の建設』昭和20年10月)
と。そしてまた
 「いよいよ世界統一の前夜として戦争史は最終戦争時代に入る。20億の全人類は今ぞ叡智の全能を動員して、その惨害を避け道義によって世界一家の実を挙げねばならぬ」(『同書』)
と新しい時代の到来を告げています。
 中村さんは、「米ソ両首脳の脳に原爆戦回避のコンセプトが、意識的にせよ無意識的にせよ刻まれたために、全面核戦争が起きなかった」と言われますが、その通りだと思います。私は今まで核戦争が起こらなかったことを、石原将軍が一番喜んでいるのではないかと想像しています。

 それでは全世界はこのままで行けば、最終戦争を経ずに永久平和の時代が来ると見て良いのでしょうか。私はこの考えは少々甘いと思います。昨年末、ロシアのエリツィン大統領が辞任し、プーチン大統領代行に権限が移譲されましたが、その権限の中に核ミサイル発射ボタンがあったと報じられました。アメリカは臨界前核実験を平気で繰り返しています。核保有国中国とアメリカとの間には完全な信頼関係が樹立されていません。それに新興核保有国間の対立感情も抜き難いものがあるようです。永久平和が達成されるまでには、またまだ多くの人々の努力が必要だと思います。
 「…指導者たちは戦争の勃発をあらゆる力で抑えようとするが、一歩を過ぎれば惨憺たる次の戦争を起こす可能性がある。これが私の永年唱えた最終戦争であり、その姿は悲惨を極めるものであろう。私は衷心より、このような悲惨な戦争を経ずに恒久平和の来ることを念願している…」(『新日本の建設とわが理想』昭和20年12月)

 石原将軍の言った最終戦争時代にはもう一つの側面があるような気がします。それは最終戦争時代には戦争が成長の極限に達して、その存在の意義がなくなり、終に死滅するという側面です。大戦後、朝鮮戦争、中東戦争、ベトナム戦争、アフガン戦争、湾岸戦争、イランイラク戦争、NATO軍のユーゴ爆撃等がありましたが、そのいずれも意義があり、効果があったと万人が認める戦争はなかったのではないでしょうか。
 「かくて人類文明の進歩が戦争の惨害をいよいよ増大するに反比例して、戦争の効果はますます減じて来る。即ち戦争は最早その意義を失おうとしている。万物は生々発育し、発育の終局に至って死滅する。一般文化と平行して整然たる進歩を遂げてきた戦争術は、今や発育の終点に近づいた。原子爆弾の出現を契機として、人類は我等の唱道して来た最終戦争時代に突入せんとしているのである」(『新日本の建設』)
 もしこの将軍の意見が正しいとするならば、我々は今最終戦争時代の真っ只中に生きていることになります。それでは我々は何をすれば良いのでしょうか。「戦争は早晩死滅するのなら、何もしないで日々の生活をエンジョウイしてれば良いじぁないか」という人もいるでしょう。然し私は出来ることなら人々が、意味のない戦争をするのを防いだり、核戦争の脅威が全くなくなる社会を建設するために、分に応じた努力をしてもらいたいと願っている一人です。


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