天照大神の子は女系継承にあらず(初級編)



女系天皇容認論を主張する人で、

その根拠の一つとして、皇祖神である天照大神(アマテラスオオミカミ)が女神なので、

その子への継承は女系になるという見解があります。

男系では初代天皇まではつながっても、神話まではつながらないと。


神話を根拠に女系天皇容認論を述べるなど、馬鹿げたことであるとは思いますが、

念のため神話まで一系統が貫かれていることを説明しておきます。


「男系」「女系」というからには、

父方の系統と母方の系統が存在しなければなりません。

二つの系統の中から父方の系統を受け継ぐことが男系であり、

母方の系統を受け継ぐことを女系と呼ぶ。

天照大神の子が女系であるというなら、

父方の系統は何かということも説明しなければならないでしょう。


「古事記」「日本書紀」を読むかぎり、父方は存在しないか、

もしくは須佐之男命(スサノオノミコト)のどちらかとなります。

アマテラスとスサノオによる誓約(うけひ)により、

のちの跡継ぎとなる天之忍穂耳命(アメノオシホミミノミコト)が

生み出されているので、父はスサノオという考え方も成り立ちます。

お互いの物実(ものざね)を交換して神々を生み出した。


しかし、大事なのはアマテラスの子とされるアメノオシホミミの父親がスサノオか、

もしくは存在しないのか、そいうことではありません。

アマテラスの親にあたるイザナキとイザナミは

同じ神から生み出されたので兄妹であると考えられています。

父方の系統と母方の系統が別々に存在しているわけではありません。

アマテラスもスサノオも同じ親を持ち、どちらも同じ系統となります。

つまり、アマテラスの子であるアメノオシホミミまでは男系も女系も存在しないのです。


皇統にはじめて母方の系統が誕生するのは、

アマテラスの孫にあたる邇邇芸命(ニニギノミコト)からとなります。

父であるアメノオシホミミが結婚によってはじめてお嫁さんをもらったから、

母方の系統が誕生しました。

ニニギも天孫降臨で地上に降りてから、

コノハナサクヤヒメという美しい女性と結婚して跡継ぎとなる子を設けています。


つまり、そもそも一系統だったものが、

天孫ニニギノミコトから父系と母系が別々になり、

そこから以後、父方の系統を代々受け継いできたのが皇統となるのです。

皇統が「男系」というから天照大神のところで「?」となるのですが、

「一系」と考えると、何の矛盾もないことがはっきりします。


これは私の思いつきではなく、「古事記」の記述を見れば明快です。

神の生誕について、天照大神の子であるアメノオシホミミまでが「成る」と表現され、

ニニギからは、以後すべて「生まれる」と表現されている。

一系統から誕生した神は「成る」、

二系統から誕生した神は「生まれる」となっています。

アメノオシホミミは天照大神から「成った」のであり、

一系統のみでつながっているのです。

一系は貫かれています。


また、「皇統譜」を見ても、はじめて「妃」という記述が登場するのは、

天照大神の子であるアメノオシホミミからです。

だから母方の系統が登場するのはその子ニニギからとなります。

したがって、天照大神とその子アメノオシホミミまでは男系も女系も存在せず、

天孫ニニギノミコトから父系と母系の二系統のうち、

父系(男系)のみを選択し続けたと考えれば全部に説明がつきます。

そして、皇統はそのはじまりから完全に一系が貫かれています。

これを的確に表現したのが万世一系という言葉です。


「天照大神が女神だから女系だ」という人には、

「天照大神の子であるアメノオシホミミは、

“成らしめる神”ですか“生まれる神”ですか?」と尋ねればいい。

また、あわせて「天孫ニニギノミコトは“成らしめる神”ですか“生まれる神”ですか?」

とも尋ねてみましょう。

結婚によって“生まれた”神は、ニニギノミコトからであり、

それにより、以後、一貫して父方の系統を継承してきているのが

皇統だということがよくわかります。


今後、皇族女性が聖母マリアのように処女懐胎されるのであれば、

「成らしめる」に該当しますが、結婚して出産されるのであれば、

その子は「生まれる」となるから、

これまでの原則にしたがうなら父方の系統を選択しなくてはならないということです。

父方の系統を選択して皇統につながらないのであれば、

それは皇統断絶を意味します。

「天照大神が女神だから女系でもいい」というのは

「古事記」をちゃんと読めていない人であるといえるでしょう。

なお、天照大神の子は女系継承にあらず(上級編)では、

竹田恒泰氏の論考を紹介しています。






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