H氏:
ご紹介いただいた事例は、大規模なお金を最初に入れてというやり方ですが、これで地域が自立するというイメージがわかないのですが。どうしたら自立と言えるのでしょうか。
最初に大きな予算を入れてしまうと、いつまでたっても自立できないと思います。
室田:
自立とは何かは、難しいことです。
最初1999年にモデル事業という形で行われ、すでに終了したビスマルク・シャルケンノート地区が、ほんとうに自立できているのか。
さきほど紹介した大規模な跡地の開発をはじめ、ソーラー都市マスタープランをつくり、ソーラー産業の育成をめざした街です。
確かにコミュニティでいろいろな活動が活発になり、職業訓練も行なわれ、ソーラーハウスの住宅もできた。サイエンスパークの運営会社は黒字になっている。しかし雇用が充足されたわけではありません。
行政系のコミュニティ・マネージャーが派遣されて、行政主導だったということもあります。またホールをつくって文化的な活動が活発になっていますが、だから自立できたと言えるのか。
ここでの自立とは、行政補助に頼ることなく自分たちで自己改善しようという意欲を持ち、それを持続的に進めていくための体制ができたかどうかということではないかと思います。例えば雇用が充足していなかったとしても、例えば様々な起業をするための仕組みやネットワークができれば、自立のめどが立つと言うことになるのではないかと思います。
この例では、跡地を開発しなければならないという事情から、最初に大きな予算を入れざるを得なかったという側面があると思います。
ただ、全体を見てみると、最初に大きな予算を入れてというものは少なく、小さな積み重ねを地道に続けている例が多いことを強調しておきたいと思います。
今日の事例では、その点を十分に伝えきれなかったかもしれません。本では、そういう例も紹介しております。
これでコミュニティが自立できるのですか
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