ドイツの地域再生戦略 コミュニティ・マネージメント
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都市戦略の大転換ではないのですか

 

I氏

 何をもっていって自立というかに関連しますが、事例を聞いていると私が期待していたレベルからすると、とても小さい話だと思いました。

 この規模では、とても地区の統合的な再生なんてできないのではないですか。

 ドイツの都市戦略として社会都市がある訳ではないのですか?。

室田

 都市戦略としてですか?。

 ご紹介した公園整備プロジェクトは、社会都市のなかで他にたくさんやっている中の一つです。

 また、一つの都市では、いろいろなことをやっています。社会都市はその一つです。

 なお、p.57の表に載せたように、連邦交通省の都市再生に関する制度だけでも、「都市開発と都市再生」「都市計画的文化財保存」「旧東ドイツの都市改造」「旧西ドイツの都市改造」「中心部の活性化」「社会都市」といったプログラムがありますが、全部で約5.5億ユーロのうち社会都市は1億ユーロ程度です(2009年度予算)。

 これらのなかには、社会都市となった地区も使える事業もあります。他の事業がハード中心であるのにたいして、社会都市は衰退地区を対象としたソフト・ハードを兼ね備えた事業という点に特徴があります。

I氏

 ドイツの都市政策が、最初に説明されたコミュニティ・エンパワメントと統合型アプローチ、ローカリズム型という社会都市に向かっているわけではないのですか。ドイツは都市戦略としてそういうことをはっきり持っていて、そのなかでの個別のプロジェクトですか?。

室田

 ドイツの都市政策がすべてその方向に向かっているということではありません。ローカリズムに、全部が向かっているわけでもありません。

 もちろん、同じ方向を向いている政策も多く、いろいろなプロジェクトがあるわけですが、社会都市はそれらを統括するためのプログラムであるともいえます。都市のニーズをマネージメントしていき、全体をまとめていくかという政策です。個別プロジェクトの一つというよりも、様々なプロジェクトを束ねるものと理解した方が良いと思います。

 またエンパワーメントが重視されるのは衰退地区だからです。どこでも重視されるわけではありません。

画像muro
本書図1.1
 
 また、最初に申し上げたように、衰退地区への取り組みにおいて、サステイナブル・コミュニティを目指しているという点は、EUのUPP1やURBANI、そして各国の再生への取り組みという大きな流れを受けて、ドイツでも社会都市に結実したものだと言えます。

 そして、そこでは経済・環境・社会が相互に関係しながら、ともに持続すること。そして、それを支える基盤としてのソーシャル・キャピタルを重視し、コミュニティのエンパワメントがまず目指されるという点は、大きな流れがあると申し上げて宜しいのではないでしょうか。

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