蓑原計画事務所主宰。1933年生まれ。1960年建設省入省。住宅局、都市局で政策立案に従事。茨城県の住宅課長、都市計画課長として現場を経験。1985年住宅局住宅建設課長で退官。1989年竃ェ原計画事務所を設立、主宰。2004年、都市計画と住宅政策を結びつけた業績により都市計画学会石川賞を受賞。 | ||
『都市計画 根底から見なおし新たな挑戦へ』を語る2011年1月、仲間と一緒に出版準備中の蓑原さんをアークヒルズに訪ね、お話いただきました。中央集権の縛りが弱くなった今、地方から運動を起こせば動かせると強調されていました。 聞き手:前田裕資(編集部)
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閉塞を打ち破る可能性は?前田:ようやく出版ということになりますが、「新たな挑戦」という限り本を読んで終わりということにもならないでしょうし、先生もお書きになって終わるということにはならないと思います。これからどうしていったら良いのか、読者にお話し頂ければと思います。 蓑原: 小泉内閣が国の形を大きく変えてくれるんじゃないかという期待があったのですが、動かなかったんです。去年の政変で、今度は民主党が大きく動かしてくれるんじゃないか、特に都市計画とか建築基準法の分野で大きく動くんじゃないかという可能性が見えたものですから、みんなで期待して、都市計画学会とか、建築学会とか、都市計画家協会とかさまざまなところでそういう話をし始めて盛り上がったのですが、残念ながら中央の動きというのははかばかしくありません。 しかし実際には、私が一昨年出させていただいた『地域主権で始まる本当の都市計画・まちづくり』をテーマにほうぼうに行ってお話しをすると、地方ではそういうことのニーズが凄く高くなっていると感じます。「なんとかしなきゃいけない」という構造、だけどどちらかと言うと「中央の変革を待っている」という構造なんですよ。だけど、そうではない段階に入ってきたんじゃないかと思います。 そういう意味で、仲間と一緒に10年越しに「都市計画 根底から見なおし新たな挑戦へ」といった本を書かせて頂いたんですが、これによって中央が大きく構造を変えて頂くことも必要だし、同時に仮にそういう大きな枠組みが変わらなくても、地方が今、主体的にいろいろなことを動かそうとすると、今までの中央集権的な枠組みが非常に弱くなってきているし、逆に地方の要求に応えるようなことが必要になっていて、そういう方向に中央が動く可能性が強く出てきています。だから、私は非常に良いタイミングになってきたんじゃないかと思います。 我われはこの本を契機として、また、そういったキャンペーンを深めることによって日本のまちづくりを通して日本の国、特に地方の経済振興とか、福祉の向上とか、文化の向上がはかれるようになるんじゃないかと期待しているわけですね。おそらくこの本を書いてくださった人の思いは一緒だと思っています。この本を契機に次のステップに踏み込めればと思っています。 地方のイニシアチブへの期待前田:有り難うございます。 多くの力強い原稿をいただいたのですが、特にこういう読み方をしたら面白いんじゃないかということはございませんでしょうか。 蓑原: そうですね。10年前に比べると、みなさん方がはっきりと全体のビジョンを捕まえて、次に何をすべきかを明確に示しておられるのですが、今回、特に大きいのは、いまや日本の都市計画とかまちづくりの最大の権威になった人たちが、そういうことについてはっきりと確信を持って語っておられるということと、あわせて、いままでどちらかというと弱かった福祉の問題とか、交通計画や住宅政策との関わり合いを前面に出すことによって、やっと世界標準の都市計画やまちづくりの議論ができるようになったのではないか、そういうきっかけが今回の本には見えているじゃないかと感じています。 前田: これからも是非、頑張って頂きたいと思います。 蓑原: そうですね。今回の本を契機としてみなさんもそういう活動をされると思うし、私も次にどういう形で動いたら良いか、ほんとに考えなければいけないと思っています。特に、一番問題なのは、地方の首長さん、知事さんとか市長さんとかが主体的に動いて、自分たちの地域を興すためには、まちづくりをとおして福祉とか文化とか、さまざまな領域を拡充していかなければいけないということに気づいて、中央に向かっていろいろ提案をしていただくと。そういう形が運動として起こると、ちょうど1970年代に革新自治体が一斉にそういう形で動いて、要綱行政、協定行政を通してまちづくりの領域を大きく広げた、総合化した、そういうことと同じような流れがまた出来るんじゃないかということを期待していると言うことなんです。 前田: どうも有り難うございます。 |
『都市計画
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【第1編
【第2編
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○蓑原敬氏セミナー『都市計画の新たな挑戦』(20100906)