街の遺伝子(レジュメ)
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ワークショップから

ネットワークと都市の資源

大阪ガス(株) 篠原 祥

 

都心について思うこと

 業務、 商業、 居住などの都市機能が集積し、 人が集まり、 活発な情報の受発信がおこなわれている「都心」といわれるエリアは、 これまでの歴史の中で時代時代に求められる役割を果たしてきた。 そして都市の拡大化、 都市機能の分散化、 居住の郊外化が進行した近年、 さらには人口の安定化・少子高齢化、 経済構造の変化、 景気の長期低迷の状況にある現在、 都心が空洞化し、 疲弊しつつあるように感じられる。 歴史を含めた集積のあるところこそ、 再生の糸口が多くあり、 アイデンティティのあるまちづくりの実現性が高く、 これからの持続可能な都市形成の意味からも、 最も大切にしなければならない場所であると考える。 今後、 ハード・ソフトの両面で都心をどのようにデザインしていくべきか、 私なりの視点を3つ挙げてみる。

 まず既存のストックの活用の視点である。 特に近代建築は都市の個性を表す重要な資源であり、 保存ではなく活用するという目で見ていきたい。 その具体的活用方策は? 次に、 まちのホスピタリティを高める視点が必要と考える。 その基本はひとであり、 人が住むこと、 常に人がいること、 自分のまちとして真剣に考え、 愛する人がいることが重要である。 しかし都心で本当にそれが可能か?それが正しいのだろうか? 最後に、 連携という視点も重要ではないだろうか。 住む人、 働く人、 訪れる人など多種多様な人の活動がある。 そのネットワークが重要ではないだろうか。 しかし、 都心に関わる人たちはみんなそう思っているのか?
 それらの手がかりを、 大阪の都心である「船場」を対象としたワークショップに求めた。


ワークショップで得た知見

 ワークショップでは、 「住まう」「伝える」「創る」の3つのテーマを設定し、 長く住んでいる人の考える船場、 旧来の船場を受け継いできた人の考える船場、 新しい船場を仕掛けて来た人の考える船場を明らかにしていった。 そこで得られた知見を私なりにまとめると次のとおりである。

 『ネットワークを都心のインフラストラクチャーと認識し、 個人と個人のネットワーク構築、 ネットワーク間の連携を進め、 必要なコミュニケーションが取れる「村」的な界隈を実現させることが、 船場らしさ、 都心らしさの創出のために必要。 また既存のハコの有効活用、 地域の歴史・文化・産業などの都市の資源の再発見・利用という「ソフト・スクラップ&ビルド」により、 船場らしさ、 都心らしさを創出していくことも必要。 そのためにはきっかけとなるしかけ・しくみづくりと、 中心的役割を担うひとづくりが必須。 』

 

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都市の遺伝子

 最初の私の3つの視点(疑問)は、 ワークショップでのディスカッションの中でほぼ確認されたと感じている。 「ネットワーク、 都市の資源という遺伝子を、 しかけ・しくみづくり、 ひとづくりにより活性させる」という仮説をたて、 今回対象としなかった幹線道路沿いの民間企業の声をも反映させ、 これからも都心のあり方を考えていきたい。

篠原 祥(しのはら やすし)
1958年生まれ。82年京都大学工学部建築学科卒業。84年同大学院修士課程修了。同年大阪ガス(株)入社。都市エネルギー分野の営業、住宅・都市整備公団への出向、新社屋の建設などの業務を経て、現在近畿圏部に在籍し、社有地整備、都心部のプロジェクト対応などを担当。技術士(都市及び地方計画)。1級建築士。


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