街の遺伝子(レジュメ)
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ワークショップから

「住まう」ということ

(有)エイライン 横山あおい

 

 「住まう」というテーマでワークショップを終えて、 一つ気づいたことがある。 それは、 昼間人口と呼ばれる人達も都心の居住者といえるのではないかということである。 事前ヒアリングやワークショップでの“住まい手の意識”や“住まい方”を聞いているうちに、 都心での「住まう」ということに触れることができた。 そこにはまちとの関わりがあり、 人や環境との関わりがあり、 愛着をはじめとした感情がある。 住み手としては、 町に住むことの利便性をまず第一に上げている。 日常の買い物は近くのショップやデパートで済ませ、 移動もすぐにどこでも行くことができる。 これはとても快適なことである。 隣近所の付き合いはあまりないけれども、 街の中には知り合いがたくさんいる。 子供の遊び場所も公園ではないけれども、 デパートの屋上や町の中などさまざまな場所があり、 環境と共に子供達の遊びも変わってきている。 自然はといえば、 休みに自然を堪能するため郊外にでかける。 環境についても、 御堂筋の銀杏が以前に比べ元気になり、 紅葉も見られるようになったことを喜んでいる、 という。

 都心に働きにきている人はというと、 彼らと余り差が感じられない。 日常の買い物を近くのショップやデパートで済ますこともあるし、 近くのコンビニへは昼夜を問わず毎日足を運ぶ。 近所の付き合いといえば、 ランチの食堂のおばさんや夜の飲み屋の叔父さん、 写真屋のお姉さんやいつもの喫茶店に集まる人達など知りあいはいる。 子供は会社近くの保育所に預けて、 通勤を共にしている。 自然はといえば、 オフィスで窓際ガーデニングをしたり、 季節は御堂筋の銀杏で感じたりする。 少し長く勤めていると、 街のさまざまな変化を感じることができ、 あそこに新しい店、 ここにこんな建物がと街の気配を敏感に感じる。 そんなさまざまな人の暮らしがそこにはある。

 昼間人口、 つまり、 都心に働きにきている人のスタイルはさまざまである。 9時から5時までオフィスから一歩も出ないで会社と住まいを往復するだけのひともいれば、 朝の早くから夜の遅くまで、 それこそ丸一日中(昼間とはもはや言えない)都心で過ごす人もいる。 スタイルや、 関わりの強弱はあれ、 そこには必ずまちとの関わりがあり、 人や環境との関わりがあり、 愛着をはじめとした感情がある。 つまり、 人の居場所に変わりはないのである。 スタイルは変化してはいるものの、 今も昔も都心は人の居場所の集積地なのである。

 「こんなところに人が住んでいるなんて、 誰も知りませんよ。 」と、 ワークショップに集まっていた中のお一人が話していた。 私自身も、 ビル街の中で住まわれている様を見せていただき、 「人が住んでるんだ」と知ったのである。 これは、 その場所が人が住むのに適切な環境でないと自然に感じるからなんだろうか?働き手にとって、 最近特によく言われているストレスは、 人の居場所としての環境が整っていないから起こっているのだろうか。 そこに何があれば、 どんな空間があれば、 人の居場所として成り立つのだろうかと考えてしまう。

 ワークショップを終え、 「住まう」ということを通し、 都市環境デザインに関わる私達は、 効率的に、 効果的に作られた都市を人の居場所として見つめなおし、 新しい空間デザインを創造する必要があるのではないかとあらためて感じるのである。


横山あおい(よこやま あおい)
帝塚山学院大学文学部卒業、褐I本鐵工所を経て1990年(有)エイライン設立。技術士(都市及び地方計画、道路)。神戸三宮センター街復興まちづくり計画、鷹取駅北線景観設計等に携わる。足利市まちづくり設計コンペUDC会長賞受賞


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