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趣味がもたらす都市風景

 

街の色の不思議な対比

 
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日本製は赤と白 アメリカ製は青と白
 
 オタク街化によって秋葉原には、 それまでにはなかった種類の業種が集まってきたわけですが、 そこには不思議な連続性もあります。 先ほど照明の話がありましたが、 秋葉原に夜行くと、 ネオンの色に偏りがあることに気がつきます。 具体的には、 赤と白が非常に多いんです。 実はでんでんタウンにも似たような傾向があります。 なぜか、 赤と白が多い。 石丸電気もサトームセンもみんな赤と白なのです。 同じような業種の人たちが集中する場合、 広告代理店的な戦略を採れば、 差別化を図って違う色にするのが通例なんですが、 そのような戦略性が見受けられません。

 なぜ赤と白なのか、 単に目立つからだろうか、 とも思われるのですが、 実はここで売られているは、 ソニーとか松下とか任天堂とか、 みんな日本が海外に輸出している、 「メイド・イン・ジャパン」といってイメージされるような商品群なんです。 石丸電気のマークを見ると、 日の丸を反転させているということがわかると思います。 中で売っている商品も、 みんな日本製。 だから赤と白なのだと言うと、 本当かな、 という感想をみなさん持たれると思います。 事例は他にもあります。 例えばビッグカメラ。 ここでもニコンとかミノルタなど、 「メイド・イン・ジャパン」的な商品が売られています。 そして、 同業のサクラヤやヨドバシなどを含め、 看板の色は赤と白なのです。

 それに対して、 英会話学校の看板は、 なぜか青と白が多い。 青と白というのは、 アメリカを表象する色なのです。 なぜか右の写真には偶然にも右翼の車が日の丸を立てていたりするのですが、 ニッポンレンタカーが赤と白、 ニューヨーカーズカフェが青と白といったような、 色彩の傾向があります。 都市の色は、 暖色や寒色といった、 色彩心理学的概念などとは全然関係ない事で、 多くの場合決まっていたりするわけです。


モデルの人種

 
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渋谷の屋外広告物
 
 皇居をはさんで秋葉原の反対側にある渋谷を見てみると、 「メイド・イン・ジャパン」とは逆の傾向が見られます。 海外風のブランドが多く、 外国の風景のポスターが多い。 駅前留学の場合はやっぱり青と白。 ポスターのモデルを見てみると、 なぜか白人が多いという傾向がみられます。 ポスターのモデルの人種に、 街によって偏りがあるわけです。

 

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秋葉原の屋外広告物 同左 同左
 
 秋葉原に戻ってみると、 モデルは逆に、 日本人が多いわけです。 垂れ幕や看板に書いてある文字も、 渋谷では横文字が多かったのに、 秋葉原では日本語が多い。 広告に犬が登場するにしても、 秋葉原ではシベリアンハスキーではなくて、 秋田犬なのです。 建物は垂れ幕のようなものでファサードが覆われ、 日本語が多い。 外国人が非常に多いにも関わらず、 です。


不透明化する建物と透明化する建物

 
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窓のない建物(秋葉原) ガラス張りの建物(渋谷)
 
 他にも興味深い傾向として挙げられるのは、 壁面が広告に覆われることのみならず、 新しく建てられるビルでは、 窓がそもそもほとんどないようなつくりのものが多くなりつつあるということです。 この傾向は秋葉原に来ている人たちのコミュニケーションに対する態度を反映しています。 彼らは自分がショッピングしている姿を、 あまり道行く人々に見られたくない、 むしろモノに囲まれていたいという人たちで、 それが図らずもファサードに反映されるということが起こっているわけなのです。

 逆に反対側の渋谷を見てみると、 ここでも反対の傾向が見られまして、 スケスケなのです。 渋谷に来るような種類の人たちは、 自分がショッピングしている姿をストリートに向かって演技するようなタイプが多いわけです。

 つまりそこに集う人々の人格、 あるいはコミュニケーションに対する態度の違いが、 ビルのファサードにまで反映され、 しかもそれが都市的規模になることによって、 都市風景が透明化したり逆に不透明化したりといったように、 人格の傾向の違いが都市風景にまで反映され始めています。 かつてなら考えられなかったような事が、 起こり始めているわけです。


パーソナリティの地理的偏在が都市の環境を変える

 
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メイドインジャパン
 
 秋葉原では電気製品に日本製のものが多い。 またキャラクター商品もセーラームーンやゲッターロボなど、 日本製のキャラクターが多いという点で、 業種は全然違いますが、 「メイド・イン・ジャパン」ということでは不思議に通底しているわけです。 しかもモデルは日本人であると。

 

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輸入品に囲まれた渋谷
 
 逆に渋谷は白人が多かったり、 ハーレー・ダビッドソンの店があったり、 キャラクターものの店があってもスヌーピーとかミッキーといったように輸入品が多いというような傾向の違いがあるわけです。

 しかもファサードは一方は透明だし、 他方は不透明化するというように、 そこにいる人の人格の違いがそのまま反映されるといったことが起こっています。

 

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別人種?
 
 これもなにげなく撮った写真ですけれども、 同じ日本で、 しかも山手線圏内なのに、 あたかも人種が違うかのごとく、 体型も違うし髪の色も違う。 性別の割合まで随分違います。 このような人格の地理的な偏在が、 都市環境を変える力にまでなってきているわけです。


日本橋でんでんタウンにおける変化

 
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でんでんタウン 同左
 
 同じような傾向がみなさまおなじみのでんでんタウンにも起こっていて、 オタク系の店が多くなりつつあります。 さすがに大阪だけあって、 かなり派手なファサードが展開されています。 ただ、 日本橋では郊外に需要を奪われる前に、 ここの店がみんな先んじて郊外に店をつくって、 需要を奪われないようにしました。 つまり大阪の電器商の人たちの方が商売がうまかったわけです。 その結果まだ家電需要はでんでんタウンに生きていて、 オタク系の店に入っても、 秋葉原と違って家族連れが結構目立つといった傾向の違いはあります。 ただそれもヨドバシが近年進出してくることによって、 危機的な状況になりつつあります。 その先どうなっていくのかということについては、 私も興味深く見守りつつ、 今後も調査していきたいと思っています。

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