◆まちづくりの担い手の変化
都市を取り巻く環境の変化に伴い、まちづくりの担い手にも変化の兆しが現れている。これまでは、行政主導の法律に基づく事業や、ランドオーナー中心に設計事務所、コンサルタント、建設会社が具体化していくという事業が中心であった。しかし、最近ではリスク分散のために複数の事業者が関わるケースや、暫定利用、仮設利用、社会実験として新しい担い手が参画するケース、そしてさまざまな担い手が連携して事業を推進するケースも増えてきている。
これらの新しい取組みについて研究し、さまざまな担い手のまちづくりへのかかわり方、連携の仕方について深掘りし、さらには新しいしくみを模索していくことは有意義であると考える。
◆まちづくりの担い手とは
それでは「まちづくりの担い手」とは誰のことなのか。このことについてフォーラム委員会での議論を、以下のように整理してみた。
まちづくりにかかわる可能性のある主体として、大きく分けると「直接的利害関係者」「間接的利害関係者」の二つがある。
まず「直接的利害関係者」とは、土地や建物を所有している人、生活を営んでいる人、生産活動をおこなっている人、利用する人である。これらを「公」「組織」「人」の三つに分類した。まず「公」とは、道路、公園、河川などの公共空間の所有者、管理者である行政機関である。次に「組織」とは、そこで生産活動を営む企業、商業施設、デベロッパー、設計者、建設会社であり、土地や建物を所有している主体も含んでいる。そして「人」とはそこを利用する立場の人であり、居住者、ワーカー、学生、来街者である。
一方「間接的利害関係者」とは、所有者や利用者という立場ではないが、波及効果を受ける主体、興味を持っ
ている主体を指す。経済団体、学識経験者・大学研究室、ファンなどがそれに該当し、それらを4番目の分類として「応援団」とする。
これらのまちづくりにかかわる可能性のある主体の内、能動的にまちに関わっている主体を「まちづくりの担い手」と考える。
以上を図示したものが図1である。
◆都心における担い手について思うこと
筆者はこれまで、所属する企業の業務(前述の「組織」の立場)として、またアフターファイブの自主的な活動(前述の「人」の立場)として、大阪都心部でのいくつかのまちづくりに関わってきた。不動産所有企業組織の一員としてのまちのプロモーション活動、産官学によるまちづくり研究会、大阪都心部(船場地区)における企業オーナーや商店会と協力したまちづくり活動、大阪の埋もれた魅力を手づくり絵はがきで発掘・発信する活動などである。それらの活動を通じて感じていることを二つ挙げる。
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フォーラム委員会より
都心のまちづくりにおける担い手とは
大阪ガス
フォーラム委員長 篠原 祥
篠原 祥(しのはら やすし)
大阪ガス葛゚畿圏室部長。1958年生まれ。82年京都大学工学部建築学科卒業。84年同大学院修士過程修了。同年大阪ガス入社。89年より、社有地開発業務、おもに大阪都心部でのプロジェクト対応などを担当。現在、大阪大学大学院招聘助教授、大阪市都市再生本部事務局を兼務。技術士(都市及び地方計画)。1級建築士。