館、高齢者施設、近隣小中学校に出向いて活動を続けている。
◆地域再生計画「文化芸術創造都市」として
 『にしすがも創造舎』を支えている重要なファクターとして豊島区の文化政策のあり方がある。15年度には区長の発案で「文化デザイン課」を設立し、文化を機軸としたまちづくりを始め文化・芸術の拠点づくりを大きな柱とした活性化計画を実施している。平成16年には、内閣府より地域再生計画として「文化芸術創造都市の形成」計画が認定された。
 その「文化芸術創造支援事業」の一つとして、旧朝日中学校の暫定的な運営をNPOとの協働事業として公募し、それに名乗りを上げ指名を受けたのが上記の「アートネットワーク・ジャパン」と「芸術家と子どもたち」である。校舎は無償で提供し、光熱費はNPOが負担している。運営に関してはNPOが行い、稽古場の賃料を光熱費、維持費にあてている。年間約1000万円強の運営費がかかり、資金は公的支援よりも民間企業からの支援の比率が大きく上回っている。
 2つのNPOの協働運営に関しては、豊島区としてもメリットがある。劇団の稽古場として貸し出しするという目的だけでは、地域への貢献度が十分ではないとも言えるが、地域とのかかわりを積極的につくりだす「ACTION!」等のプログラムを運営する「芸術家と子どもたち」との協働事業であることによって、芸術活動を育成する支援と地域コミュニティの芸術活動への参加支援という両輪のバランスを保つことができるのである。
◆今後の展望と課題
 今後の展望として「アートを軸とするチルドレンズミュージアム」という児童館と美術館の中間的なものを作りたいと考えている。子どもたちが日々放課後に顔を出
して遊び、展示物をアーティストと子どもたちが一緒につくるというような、誰に対してもオープンで好きなときに行けてゆるやかに交流できる。堤氏は「多様性と周縁という言葉をキーワードにしている。例えば障害のある子どもや池袋などが近隣であることから多国籍の子どもに対しても開かれた場になるようにしたい」と抱負を語っている。一方、「アートネットワーク・ジャパン」は、将来はここに劇場機能を持たせ、アーティストのレジデンス施設を併用し、地域との交流がはかれるサロンをつくりたいと考えているそうだ。しかし、運営費の安定した確保が現在の最大の課題である。
◆NPOの実験性・創造性
 廃校再利用の例では、京都の中京区旧明倫小学校をアートセンターとしてリニュアルした『京都芸術センター』が先駆的存在である。若手アーティストに制作の場や発表の場を提供し、図書館やカフェの併設によって地域住民との交流の場を創っている。施設がかつて地域コミュニティの核であった学校としての役目を終え、そこにアーティストと教育機能やコミュニティビジネスのサポート機能、カフェなどを組み込み、新しいアイディアを持ち独自の活動をしている地域の人たちとネットワークを形成している。このような新たな取り組みが、相乗的・連鎖的に生まれてクラスター化していく試みにおいて、NPOは地域のインキュベーション機能を担うことができる。NPOの実験性・創造性がコミュニティや地域の潜在的な可能性を引き出し、それを活性化あるいは再生していく。生活の質の高さを求める市民が増えていく日本社会において、創造的な市民活動を支援していくことによって、地域を再生し持続的に発展させる公共政策が求められている。『にしすがも創造舎』は、NPOと自治体の協働による一つの実験的試みと言えるだろう。
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図3 子どもとつくる舞台シリーズ「踊る!すがも地蔵通り !」ワークショプ風景
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図4 NPO法人「芸術家と子どもたち」事務所風景
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*1992〜2001年までの全国の廃校数は計2,125校。毎年150〜220校が閉校になっている。今後、その数はさらに増えることが予想されている。(文部科学省調査による)
*『にしすがも創造舎』http://sozosha. anj. or. jp
「芸術家と子どもたち」http://members. at. infoseek. co. jp/ASIAS
「アートネットワーク・ジャパン」http://anj. or. jp
*NPOの実験性・創造性によるインキュベーション機能については,『市民活動論』(有斐閣)福原義春、後藤和子編に詳しい。

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