鳴海:
蓑原先生にお尋ねしたいのですが、グローバリゼーションはこれからどんどん進んでいくと思うのですが、その一方で都市のクオリティとかアイデンティティがないと企業もやっていけないと気が付いてきていると思います。
そうしますと、今先生がおっしゃった家業的な仕事だけがローカルアイデンティティを創っていくんじゃなくて、結構大きな企業も都市のクオリティとかアイデンティティとかに責任を持たないといけないという状況が段々わかってきていると思います。
そういったときに従来ですとフィランソロフィー(社会貢献活動 )とか色々ありますが、これからは企業自身のビヘイビアで街のクオリティを高めるとかアイデンティティを創っていくという役目があると思うのです。
それで、先ほどの地方自治体がそういった事をやらないといけないというお話がありましたが、少なくとも日本の状況を考えると、過渡的とおっしゃいましたが、その過渡的状況が50年くらい続くと思うのです。ではその間に家業的な小さな会社だけがローカルアイデンティティを保つよう努力するとしても、もうそれしかできないとなると未来が結構暗いという感じがします。
しかし、大企業としても、自らの拠点がなくなれば日本の経済が変になるくらいの事はわかっていると思いますから、頑張る企業が出てくると思います。東京の企業はまだわかっていないかもしれませんが、大阪や京都の企業は認識していると思います。
ですから、それをどうやったらいいかということを、先ほど質問があった企業で働いている方が感じているのだと思います。それもあって都市大阪創生研究会もできたわけですけれども、やはり企業が頑張って、市や地方自治体とサシで議論しないといけない。そうでなければ市役所も緊張しませんし。そういう状況を繰り返していけば、少しは都市を先導できるお役所ができ上がっていくのかなという気もするのです。
ですから、ローカルアイデンティティを創るのは、家業的な仕事をやっている会社だけではないと思うんです。その点いかがでしょうか。
蓑原:
今非常に正確な点をつかれたと思います。
例えば京都だったら特色のある企業があります。大阪にもあるのかもしれませんが、それが本当に大阪のローカルアイデンティティを守って大阪の自分の資産を守るという力と、それからもっとグローバリゼーションを志向する力との拮抗の中、ローカル志向の企業がどういう形で生き残れるかというのは私にはよく見えていません。
例えば典型的なのはデパートやスーパーです。そう考えるとローカルなものはほとんど消え失せてしまって、ほとんどナショナライズされて、さらにそれがグローバライズされていくという構造の中にあるように思います。
鳴海先生が今おっしゃたようなものがあれば、それこそ税制とか色んなものを変えながら、そういった企業が地域に対して責任を持つというような構図にもってゆけると思うんですが、本当にそれが現実になるのかは僕にはわかりません。
例えば京都のワコールとか京セラといった企業の方は、そういう意識を持ってやっておられるのでしょうか。
大企業の担い手としての可能性
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