第15回都市環境デザインフォーラム関西
左三角
前に 上三角目次へ 三角印次へ

 

越後妻有アートネックレス整備事業での大地の芸術祭の位置付け

 

画像ki32
越後妻有アートネックレス整備事業を好背する四つの事業
 

固有の時間が流れている空間をどうしてゆくか

画像ki30
アート配置図
 
 760平方キロという琵琶湖よりちょっと広い面積に、昔は200の集落がありました。この200の集落全てに徹底的に関わっていこうというのが大地の芸術祭の精神です。今も、作業所として家は残っているものの、年に1つか2つの集落がなくなってきています。それをなんとか止めよう、また最低限その場所に記憶を残していこうと思っています。

 平均一泊二日で4万円以上かかるものの、今年は35万人もの人がいらっしゃいました。初めての人はブーブーと文句を言います。こんな広い場所を歩かせないで、一箇所に集めろという意見も多く聞きます。夏の新潟は気温湿度とも日本で最も高く、また案内も十分ではないということもあり叩かれ続けましたが、それぞれの生きてきた場所こそが、それぞれの中心という考え方がありました。固有の時間が流れている空間をどうしていくかいうテーマになっています。


最初はステキ発見事業から

画像ki33
越後妻有8万人のステキ発見事業
 
 いくつかの話し合いをしましたが、ステキ発見も行いました。「たぬきを一緒に捕まえよう」といったおもしろい賞品がたくさんあり、多くの人が応募してくれました。どれも見事に地域を表したものになりました。

 小さな棚田にある作業場としてしか使われていない建物、田んぼをやっているおばあちゃん、そして豪雪です。半年にも渡る豪雪の中での労働というものが、この地域の鍵になるもので、また良し悪しを越えた真実であることが見えてきます。

 長い集落で1500年、平均でも500年、600年も続いてきた集落の生活が絶対の事実であり、ここの生活をどのように見せていくのかということしかありません。グローバリゼーションの中で、六本木ヒルズのようなものを持ってきても駄目なのです。この地域のおじいちゃんやおばあちゃんは、五感を通して自分の身体に関わることをやってきたのです。そのため、私たちは六本木ヒルズを作るわけでも、ディズニーランドの真似をするわけでもなく、ここで生きてきた事実が最高のインフラなのです。

 国際交流基金、横浜市、NHK、朝日新聞がやっている日本最強の横浜トリエンナーレというイベントがありますが、大地の芸術祭の半分の人しか来ていません。つまり、田舎の方が田んぼや里山などの強いインフラが存在しているということなのです。大阪は、大大阪と呼ばれた時代がり、上町台地などに見られるように、東京より決定的に強いインフラがあります。どうしてその強いインフラを率直に表現しないのでしょうか。

 越後妻有では、10年も経れば高齢化のために田んぼは崩壊してしまいます。人が長年住み自然との対話ができてきた地域を潰してはいけないのです。そういった地域をどうしていくのかを、まずステキ発見を行うことで把握していきました。


現代アートの前に取り組んだ事業

画像ki34
花の道事業/花を使って広域を繋ぐ美しい交流ネットワーク事業。ポケットパークやサインなどを含め、総合的な景観施策と地域らしいインフラの整備を推進します
 
画像ki35
ステージ整備事業/地域の特性を生かしたコミュニティの核であり、交流拠点ともなる自然体感型空間を整備します。地域外の人々との協働と住民参加の場として位置づけられる施設群です
 
 現代アートをやるなんて言うと、みんなに止めろと言われました。まずは花を植えることで、みんなを繋いでいこうとしました。

 他者が関わるという事をわかりやすく示すために、外国の人に徹底的に参加してもらいました。インフラというか構造を変えていかないと、頭の中も変わってくるはずがありません。

画像ki40
雪の花火
 
 中越大震災がありましたが、それまでに地域に入って活動をしていたので、いろいろとお手伝いをさせて頂きました。この2年間は、豪雪だったのでお手伝いに行きました。

 手伝いに来ている人の子供たちと地元の子供が一緒に、作家と「雪の花火」というワークショップを行いました。

 半年におよぶ冬の期間をどう位置づけるのかが鍵になってきます。良寛という江戸時代のお坊さんは、五合庵という小さな所で生活し、そこで生まれる人を恋する気持ち、春を待つ気持ちが一つの哲学へと昇華しています。彼に倣って、ここを夏耕冬読の地にしたいと思っています。

左三角前に 上三角目次へ 三角印次へ


このページへのご意見はJUDI

(C) by 都市環境デザイン会議関西ブロック JUDI Kansai

JUDIホームページへ
学芸出版社ホームページへ