2。町式目を復活させた平成のまちづくり
姉小路界隈を考える会事務局長 谷口親平
姉小路通りはご承知の方も多いでしょうが、御池の一本南、御池と三条の間にある職住共存している通りです。右側には老舗の絵の具屋さんと蕎麦ぼうろのお店があり、写真のような木彫り看板を掲げてこの通りのシンボリックな存在になっています。
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写真は、新風館から少し東に入ったところにある老舗のお菓子屋さん「京御菓子司亀末廣」をライトアップした様子です。200年以上の歴史があって、大政奉還のとき明治天皇から東京に行こうと誘われても京都に残ったという逸話をもっている由緒あるお菓子屋さんです。姉小路では平成7年に行灯を復活させて以来、毎年夏に、こういう老舗の看板をライトアップしたり、通りを手づくり行灯で演出する催しを続けています。
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我われの運動「姉小路界隈を考える会」は、今から13年前になりますが、大阪ガスが姉小路のそばの所有地にマンションを建てるという話をきっかけに誕生しました。 当初は大阪ガスさんも経済性を最優先させた11階建、容積率400%のマンションを建てる計画でした。我われも反対運動を開始したのですが、反対だけでなく「できれば大阪ガスさんも誇れて、地域のためにもなるような建物にしてもらえないか」という話し合いを1年ぐらい続けました。その結果、大阪ガスさんも計画を再考されまして、最終的に写真のような高さ・容積率を抑えたマンション計画にしてもらえました。
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実はこの運動が京都市の景観政策にも影響を与えたようで、歴史的景観地区における集合住宅のモデルのプロトタイプになったと聞いております。北側斜線制限、道路にセットバックを設けない、1階を店舗にするなどの案は、2年間で17回の検討会を重ねて決めたことですが、こうした姉小路界隈を考える会の提案が後々、京都市の景観政策に影響を与えたのではないかと考えております。
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大阪ガスのマンション「アーバネックス」(21m、240%)はこうして地域に好感を持って迎え入れられ、工事が進んでいますが、ちょっと遅れた頃その向かいに困ったマンションが出来てしまいました。柳馬場から堺町通りまでまたがって出来た巨大マンション(31m、400%)で、二つの元学区にまたがってますから地域のコミュニティまで台無しにしてしまったんです。
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アーバネックスの方はまだ工事中だったなのに、後から来たディベロッパーがさっさと高い物を建て逃げ、売り逃げしようとしたわけで、これには我われも困って頭を抱えることになってしまいました。北側の地域の日照も大幅に減ってしまいました。 模型の中で柳馬場通りの左右のマンション北側(手前側)に投影されている日影部分に注目ください。 左側のアーバネックスとの違いが明らかにお分かりになるでしょう。
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そうこうしているうちに、リクルートマンションが御池に出現しようとしています。高さ45m、容積率700%で、おそらく京都市内初の最悪のマンションだと思います。北山はぜんぜん見えなくなってしまいました。私は今でも、この計画が出た時点で京都市はこれを認めないという選択をするべきだったと思います。この時それが出来ていたら、今問題となっている「既存不適格建築」も防げたことでしょう。残念ながら当時は京都市も我われ市民もそれを食い止めるだけの力がありませんでした。
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こういう出来事を通して、我われももっと勉強する必要があると痛感しました。「町式目」という江戸時代からの古いルールを引っ張り出して、1年間ほど勉強して作ったのが現代の「姉小路界隈町式目(平成版)」(平成12年4月)です。
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これを基本として、平成14年7月に「姉小路界隈地区建築協定」を締結しました。この協定では、高さ以外に建物の用途も制限しています。ワンルームマンション、コンビニエンスストアは認めない内容になっています。
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こういう運動を10年続けてきたわけですが、そのおかげで京都市から「街なみ環境整備事業」の助成を受けまして、姉小路に面している京町家のファサードの再生をすることができました。現在までに7件の事業が完成しています。写真がそうですが、右側は2階の虫籠窓の復元、左側もファサードを整えました。この助成は外観整備にのみ適用され国と市から3分の2の助成をしていただきまして、個人負担は原則として3分の1の費用でいいという内容です。
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ところで、写真に示した夜の手づくり行灯の光景ですが、この行灯は京都御池中学校1年生168名の手づくりです。これを姉小路に並べて、1年に何回か「灯りでむすぶ姉小路界隈」という催しをやっています。地域の方だけでなく、学校、中京もえぎ幼稚園などと一緒にまちづくりを進めているわけです。
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町の催しに京都御池中学校のブラスバンドに来てもらったときの写真です。今年の地蔵盆の時も来てもらって、姉小路界隈を練り歩いてもらいました。まちづくりを、広く町内や学区の方に知っていただきたいし、それを継続していくためにも若い方に関心を持って頂きたい、そのために学校や幼稚園とも協力しあって活動を続けていきたいと思っています。 京都御池中学校は、北が丸太町、南が五条、東は鴨川、西は堀川と非常に広い校区です。南北が2.4km、東西も1.9kmほどです。元学区で言うと、13の地区から子どもたちが来ているわけです。その子どもたちが、こういう催しに触れることで、自分たちの町のことを考えたり見なおしたりするきっかけになってくれればいいと願っております。
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写真の右に見えるのはガス灯です。以前ここに、大阪ガスさんの前身でもある京都ガスさんが、ここでガスを作っておりました。そこで、アーバネックスの敷地の中にそれを記念するガス灯を設置して欲しいと大阪ガスにお願いしたのですが、敷地の中は難しいということで町内に設置することになりました。このガス灯を赤く燃やして、まちづくりのシンボルの火としました。我われの思いを込めたガス灯でございます。 この地蔵盆の前夜祭には門川市長も駆けつけてくれました。やはりまちづくりは地域が主体とはいえ、行政・学識経験者の力が大きいものですから、行政と協力、あるいは行政に支援をいただきながら、まちづくりを続けていきたいと考えているところです。
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