会議の関西ブロックが中心となって開催してきた〈都市環境デザインフォーラム・関西〉も、 おかげさまで第4回のフォーラムを無事終了することができ、 今年もおおぜいの方々の参加を得て、 貴重な意見交換がなされた。
本記録集は、 フォーラムに参加していただいた方々の発言を記録として残し、 得られた成果と今後に残された課題を整理する目的で作成したものであり、 今後、 各方面でなされるであろう議論のたたき台として利用していただければ、 望外の喜びとするところである。
都市環境デザイン会議(JUDI=Japan Urban Design Institute)は、 従来の縦割り的専門分野にとらわれることなく、 むしろ、 その領域を超えて、 知恵と力を結集すれば、 より一層魅力のある素晴らしい都市がつくれるのではないか、 との思いから、 多様なジャンルの都市づくりに関わる人々が集まって、 1991年の5月に結成した団体である。
設立以降、 各地域で都市づくりに関わる人々の交流をはかり、 都市デザインの向上のためのさまざまな活動を進めている。
関西ブロックは、 全国組織である都市環境デザイン会議の関西方面のグループであり、 毎月のセミナーと年1回のフォーラムを中心に活動を続けている。
1992年の7月には第1回のフォーラムを開催し、 「都市環境デザイン-関西は今-」と題し、 都市環境デザインの扱う分野を総括的に再確認し、 併せて、 パネルによるプロジェクト展示を行った。
翌年の第2回フォーラムは、 兵庫県立人と自然の博物館との共催により、 「田園と自然を考えるシンポジウム」として開催し、 併せて丹波の地において、 地元の方も交えたオープンワークショップを開催した。
また、 昨年の第3回のフォーラムは、 槌音響く関西学術文化研究都市の地において、 「土木と環境デザイン-その理念と実践的方法」として開催し、 併せて、 関西、 四国、 九州のメンバーの提案による、 90のキーワード、 約800のサブキーワードに分類される「土木デザイン・キーワード集」を発行した。
今回、 第4回のフォーラムを、 私達にとって、 今後決して忘れることのできないであろう、 あの1月17日からちょうど10カ月目に、 神戸の元町の地で開催したわけであるが、 震災の以前から、 フォーラムのテーマとして「まちとアイデンティティ」を考えていた我々にとって、 非常に複雑な思いがある。
震災とその後の復旧、 復興への問題のなかで、 このテーマは、 従来から都市環境のデザイン、 まちづくりを考えつづけてきた我々の目前に、 一挙に、 なまなましい姿で突きつけられた課題になってしまった。
早期の復旧、 復興が求められる一方で、 知恵と力を結集し、 市民と行政、 都市づくりに関わるすべての人々が、 力を合わせて取り組まねばならない課題になってしまった。
そのための土壌づくりといった点に関しても、 その方向性を改めて確認し、 取り組むことが必要となった。
地域風土に根ざし、 歴史的に継承発展されてきた街の個性は、 そこに住む人々、 生活の顔であり、 生活文化の表出であろう。
今回の震災で、 それらは、 あるいはそれらの大半は失われたしまったのだろうか。
それとも、 従来の延長上に復活するのだろうか。
あるいは、 新たな時代背景にもとづく個性的な街に生まれ変わるのだろうか。
今回のフォーラムのテーマは、 都市環境デザインの連続性という視点からの「まちとアイデンティティ」である。
近年は、 従来の近代建築や近代都市のかかえる問題を解消するための考え方として、 場所性、 地域性、 風土性、 ということが話題になっているが、 この点に関しては、 なかなかそれらが共有の概念になっておらず、 時として、 誤って理解されることからくる環境の混乱の原因にもなっている。
「まちとアイデンティティ」というテーマは、 まちづくりのどの部分に有効な議論なのだろうか。
まちを論ずるときの「アイデンティティ」という概念は、 事業を進める立場、 計画をする立場の人々と、 そこで暮らす人々との間で共有することのできる、 社会性のある概念になり得るのだろうか、 今回のフォーラムは、 この点をテーマとして、 意見を交わしたいと考えた。
基調講演には、 トロント大学教授、 エドワード・レルフ氏をお迎えし、 「場とアイデンティティ」と題して、 根元的な問題提起をお願いした。
レルフ氏には、 今回のフォーラムの為に、 わざわざカナダからお越しいただいた。
また、 フォーラムに先立ち、 西宮、 京都、 六甲アイランド、 豊中の各地で、 住民の方々をも交えたプレフォーラム・ワークショップを開催し、 意見交換がなされた。
その報告もフォーラム当日行われ、 また、 詳細が本記録集に掲載されている。
今回のフォーラムが、 参加いただいた皆様にとって、 そして、 今後のまちづくりにとって意義のあるフォーラムになり得るかどうかは、 すべて、 今後の取り組み次第ということになるのであろうが、 この議論が引き続いて展開され、 日本の街が、 我々の生活環境が、 少しでも良くなることを、 都市環境デザイン会議のメンバー一同、 心から願うものである。
最後になりましたが、 今回のフォーラム、 プレフォーラムを通しまして、 御後援、 後協賛いただきました方々、 講師の皆様を始めとして、 御協力いただきました全ての方々、 御出席いただきました皆様に、 この場を借りまして、 厚く御礼申し上げます。