デザインに関わるすべての人々の心が一体となれば、 おのずとそのまち「らしさ」は形成されるはずである。
そうした心のよりどころをどう持つかがこれからの課題である。
神社のたたずまいが継承されるのは、 じつはこうした点が影響していると考えることもできる。
能勢街道の場合を考えるとき、 そこに暮らす人々の気持ちが一体になっているとはかならずしもいえない。
そうした状態がまちなみにもあらわれているのである。
このまちでは生活がいきいきと動いている。
そこでは、 当然、 現在の生活やライフスタイルへの適応が必要である。
一方で、 先人たちから長年にわたって受け継いできた資産がある。
こうした歴史性と現代性をいかに調和させ、 将来へ手渡していけるのか、 が問われている。
すなわち、 ダイナミックな「生きた街道」としての魅力にいかに磨きをかけられるかがポイントである。
さきにも述べたように、 凍結的な保全は似つかわしくない。
しかしながら、 従来のものをすべて否定することも避ける必要がある。
こうした課題に答えを出すのは、 やはりそこに暮らす人々の志ししかないのである。
「らしさ」、 とくに人工物のデザインがかもしだす「らしさ」は、 人々のまちづくりに対する意志の表出である。
うわべのデザインでとりつくろう「らしさ」はすぐにだめになる。
人々の生活や意識に根づいた「らしさ」こそ本物であり、 そうしたものを生み出すためには、 なりわいや生活をも含めた総合的な「まちづくり」が必要になる。
職人のまちが雰囲気をかもし出すのはこういった魅力だといえる。
さいわいにこのまちには「豊中駅前まちづくり協議会」「おかまちまちづくり協議会」が中心となったまちづくり活動が定着しつつある。
そうした一環として能勢街道の今後のあり方を模索することによって新たな「らしさ」が形成されることを期待したい。