JUDI関西 「イタリア都市とアイデンティティ」 by 井口勝文
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4 ゆっくりと時間をかける
世代をかける
そういう建設の時代がもう来る

 それじゃ四番目の問題提起になりますが、 風格、 あるいは味わいの深い、 そういう街をどうやってつくるのかということです。

これは結局時間をかけるしかないなということになるのです。

そのかけ方は、 価値観の置き方じゃないかと、 自分の生活の価値観をどこに置くかということになるだろうと思うのです。

我々は急激な経済成長を遂げてきました。

僕らは建設会社におりまして、 たくさんの仕事をいただいて、 大変結構な時代だったわけですが、 これからは、 街づくりの原動力というものが経済成長じゃなくなってくるだろうと言われています。

   

 先ほどのレルフさんの話ではラディカルな街づくりと言われたわけですが、 そういうものじゃなくなってくるだろうということです。

これからはもっとゆっくり造っていく時代になるだろうということです。

   

 そうすると自分の生活というものをもっとじっくり見るということができるだろうし、 街づくりの中で自分の価値観というものがいろんな勉強を通じて出てくるだろう。

一つの街づくりの計画を作って、 計画が出来たらすぐ建てるというようなこともおそらくなくなるだろう。

一度計画を作るけれども、 しばらく放っておいて、 それでもう一回作ってみて、 考え直してみてという具合に、 非常にゆっくりした街づくりができるんじゃないかなと、 これは半分期待ですが、 そう思っています。

   

 市民参加っていうのは、 実はそういうことだと思っています。

何かを建てるぞ、 さあ、 皆んな集まって、 市民が皆んな集まって案を作ったから、 さあこれで街をつくろうという、 そういう性急な市民参加というのは実はほとんど意味がないのです。

ゆっくりと時間をかけた、 それも世代をかけた時間をかける、 そのようなプロセスにおいて、 始めて本当の市民参加が可能となり、 私達の生活の価値観が見直され、 それが街づくりに反映して、 そこに街の味わいが生れ、 やがて風格といわれるものにまで高められていく。

そういう建設の時代がもう来るんじゃないかと思います。

   

 最初に私はイタリアの街にアイデンティティがあるのなら我々の街にだってあるぞ、 一緒だということを言いましたが、 味わいと風格の違いということになるとやはり我々はイタリアの街にシャッポを脱がざるをえない、 どうしてもかなわないものがあります。

それはこのような時間のかけ方、 市民参加の積み重ねの差が表れているとも言えます。

日本で仕事をする都市環境デザイナーとしては、 これからは非常にいい時代になるんじゃないかなというふうに思うのですが、 これは楽観的でしょうか、 どうでしょうかというのが四番目の問題提起でございます。

   

 四つの問題提起。

他と違うことがアイデンティティではないということ。

アイデンティティを発見する眼差しということが我々に求められているんじゃないかということ。

アイデンティティとは結局味の勝負、 風格の勝負じゃないかと、 そして最後にそういうことがやれる時代が来ているのかなという四つの問題提起をさせていただきました。

ありがとうございました。

   

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