しかし、 そのことは当然であるけれども、 今年は戦後50年でもあります。
そうすると、 戦災復興から50年ということを踏まえて、 やはり今、 まちづくり・都市づくりに関する基本的なテーマと言いますか基本的な主題、 それが一体何であるかをもう一度考え直す、 もう一度捉え直す、 そういうことが必要なこととしてあると思います。
今回は、 先程これも鳴海先生が人に属する概念と言われましたけれども、 現象として在る都市、 イメージとして在る都市、 それがどうなんだという辺りの話というのは、 それこそリンチ以来そういう問題が鮮明に浮かび上がってきて、 先程申し上げた場所論が盛んになって、 そういうところからアイデンティティということを捉えなければならないという風になったんだと思います。
一方で、 鳴海先生は場の側と言いましたが、 環境の側については、 都市意匠と言いますか、 空間の意匠と言いますか、 そういうことが問題になってくるだろう。
これを材野先生は「日本的な都市空間」という言い方でおっしゃっていました。
これは、 それこそバロック的都市づくりがあって、 一方、 それに対してカミロ・ジッテの広場の造形があって、 ゴードン・カレンの場所のシークエンスですか、 そういうものとして都市意匠を捉えようという流れがある。
そういう流れをもった基本的な問題としてあるわけで、 材野先生の日本的な都市空間をどうするんだという話は、 非常に重要な事で、 改めてまた考える必要があるのではないかという風に思っています。
他には、 例えば山崎先生が生産システムと関わって機能主義、 科学主義、 国際主義でもって云々ということをおっしゃいました。
要するに社会的・文化的な産物として都市があるわけで、 あるいは文明の所産、 総合的なものとして都市があるわけです。
まあ日本には文明がない、 せいぜい「亜文明」だということを確か川喜田二郎先生がおっしゃっていたと思うんですが、 それはそれとして、 そういうものとして都市を考えたときの問題です。
都市づくりの価値観とか制度という話が西さんの方からも出ていましたし、 先程の移植される文化という問題もこういうところと関わると思います。
こういう捉え方も必要であるので、 今後の課題としてまたこのフォーラムで取り上げて頂きたいと思っております。
これは先程申し上げたような都市のイメージとか現象としての都市ということで、 それに対応してアイデンティティを捉えたということはまあ当然だと思います。
そして「用」に対応して、 「事物的空間」ということをおっしゃっているんですが、 これは機能に対応した空間の捉え方です。
今日は非常におもしろかったんですが、 機能という言葉が出てきたのは海上都市のワークショップ報告と、 もう一つ、 田端先生が機能という言葉を使われていました。
まあ山崎先生が機能主義ということをちょっとおっしゃったんですが、 その程度なんですね。
しかしもう一度、 機能ということから見直すということも私は必要だと思うので、 こういうこともまた考えて頂けたらなと。
それからもう一つ、 「強」に対応して「物理的空間」ということを森田先生はおっしゃっておられるんですが。
物理的空間ということも、 私、 実は非常に重要だと思っています。
それでこの前、 都市計画学会関西支部のシンポジウムを「積み重ねとしての都市づくり」をテーマにやりまして、 材野先生にも鳴海先生にも出て頂きました。
要するに今ごく普通に街を造っているのは、 日本では例えばコンクリートの寿命は50年ぐらいだというようなことでやっているし、 おそらく建築の人なんかは20年か30年ぐらいしか自分の造った建築は保たないという位のつもりでやっていらっしゃるんじゃないか。
そうではなくて、 100年、 200年保つということを前提にして造ったら実は何もかも変わってくるんじゃないか。
都市造りの基本自体が、 何年保たせるんだということで全然違ってくるんじゃないかということなのです。
単純だと言えば単純なんですが、 実際そうしておけば今度の震災の被害も非常に少なかったかもしれないわけです。
だから、 そういうことも非常に重要で、 物理的空間という見方からもやはり論議していかなくてはいけない。
もう一つ思うのは、 森田先生は「超越的空間」ということをおっしゃった。
これは「聖」に対応しています。
その超越的空間も実は都市には非常に重要で、 宗教であるとか神であるとか卑俗なところではお祭りであるとかのための空間ですね。
先程重村先生が沖縄のアニミズムの話をされて、 これもやはり非常に重要な問題だという風に私は思います。
取り上げられねばならない問題だと思っております。
そういった形で、 取り上げられるべき課題というのはまだまだあるだろう。
これを我々としてはこういう機会、 震災後であるし戦後50年も経った、 そういうことを契機として、 基本的なところを見直していかなくてはならないというふうに考えております。
以上が私の感想ですが、 最後に今回のフォーラムの形、 フォーラムの進め方という事で、 各地を巻き込んで何度もやられた。
これは非常に画期的なことであるし非常に多くの人々を、 我々専門家だけではなくて住民の方々を巻き込んでやったという運営方法自体を、 非常に大きな意義があったと評価したいと思います。
企画・運営された委員の方々には非常に大変だったと思いますが、 大成功であったわけで心からお喜びを、 同時に御礼を申し上げます。
運営された方々、 参加された方々にここで拍手をもって御礼申し上げたいと思います。
どうもありがとうございました。