住みあう―使いあう
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路上生活のすすめ

山手総合計画研究所 菅 孝能

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個人をプライバシーの檻に囲い込んでゆくのでなく、 公私の融合、 公共空間の中に私性を解放してゆく空間こそ都市の魅力!

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画像t034-1 街路の居間――日の仕事を終えてくつろぐ家族。

夕顔棚の下のむしろは家の延長であり、 風通しの良い居間。

生気にあふれたアジアの都心居住の原点(久隅守景「夕顔棚納涼図」)

画像t034-2 街路の客間―洗濯を終えて子どもをあやしながら井戸端会議に興じる女達。

老人達も椅子を持ち出して客座をつくる。

青空のもとの街路は広大な客間だ(スペイン某所の路地)

画像t034-3 街路の庭―庭のとれない都心居住では街路に面した壁は立体的なコンテナ・ガーデン。

住み手の個性が表われる変幻自在な街のギャラリーとなる(東京都谷中の路地)

ふりむけば未来がみえる

 戦後の都市空間は、 日本人の個人としての自立性を確立させようという時代精神のもと、 あるいは地域共同体が弱体化する中で、 公的空間と私的空間を明確に分化する方向で進んできた。

そして、 公的空間は巨大な経済の論理と行政管理の力学によって均質化の一方を進み、 私的空間はプライバシー崇拝の中で閉鎖性を強めていった。

   

 しかし、 都市はそこに暮らす人々の様々な私的空間の集積であり、 織りなされたものと考えるならば、 公的空間もまた個人の私性を解放し、 表出してゆくことによって、 生気をとり戻せるのではないだろうか。

それは公私に二元化された空間を調停する中間領域とか、 共有空間という概念にとどまるものではなく、 公共空間の中で泡のように生じては消えてゆく私的空間、 私的領域をいかに意識させ、 領域化することができるかにかかっているといえよう。

街路における私的空間のシーンは、 歴史的にも様々な地域で見かけることができた訳であるが、 一定のルールのもと、 共同で、 あるいは融通し合って公共空間を使い合い、 個人の路上生活の領域を再生することが都心居住だけでなく都市を魅力あるものにする大切な鍵ではないか。

   

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