都心はビルだけのものではない。京都などに見られる低層住居の瓦屋根の作り出す景観は正に都心のランドスケープ(風景)である。
軒先、 屋根勾配を揃えていく街並みは共同体としての街の姿を表現している(京都市西陣) | |
様々な意匠の屋根が群として作り出す風景は都心ならではの造形である。 道の突き当たりにある屋根も通り自体の性格を作り出している(京都市西陣) | |
陶磁器に携わる人々の協業の街として発展してきた五条坂には、 その面影がまだ屋根の連なりの中に残っている(京都市五条坂) |
都心にこそ瓦屋根があって欲しいと思う(特に歴史都市である京都などには)。
都心部は陸屋根の商業ビルのもので、 勾配屋根があるのは郊外だけでは何とも寂しい。
太陽の光を受けて陰影を作り出し、 キラキラ輝く瓦は素晴らしい仕上げ素材だ。
遠景から近景まで、 どのスケールでも魅力あるテクスチャーを見せてくれる。
街を歩いていて、 はっとする風景に出会うのはほとんど瓦屋根との出会いであるような気がする。
住居の密集した都心部の瓦屋根の連なりには、 時として見事な造形が見られる。
当初から意図されていないものは尚更だ。
そのような都心部ならではの風景は、 隣棟間隔のあいた郊外や田園の景観とはまた違った、 都市の生み出した貴重な造形である。
そのような瓦屋根の重なり合いの作り出す風景は、 集まり住む姿の象徴でもある。
瓦の傾斜屋根は方向性を持つが故に、 その表情を多彩に作り出すことが出来る。
周囲との協調を意図することも、 その中でちょっと目立つことも違和感なく表現できる。
コンクリート陸屋根が自己主張の強い個人主義的形態だとすれば、 瓦の傾斜屋根の連なりの造形は共同体としての、 寄りあうものが生み出す街の形態ではないだろうか。