混じりあう―空間が混じりあう
左三角
前に 上三角目次へ 三角印次へ

まちはダイニング・キッチン

大阪大学 小浦 久子

* * *
まちに暮らす魅力の1つは生活時間の選択性が高いこと。

しかし生活者が少なくなると生活に必要な基本機能の選択性が低下する。

* * *

画像t082-1 イタリアの都市にはいたるところにバールがある。

値段はいろいろ。

カフェ兼食料雑貨屋。

朝早くから夜遅くまで都市生活の様々な表情を見せる(ミラノ中心部の街角)

画像t082-2 香港のまちなか。

高層住宅の低層部が商店街。

その前面に路上マーケットが夜遅くまで開いている。

肉、 魚、 野菜など何でもある(香港、 北角)

画像t082-3 大阪の中心業務地区に隣接するこのあたりは大規模なマンションが多い。

都心に近いにも関わらず生活不便と聞く。

夜になるとコンビニの灯だけが目立つ(大阪市西区土佐堀)

 食べることは生活の基本である。

ヨーロッパを旅していると、 都心で日常生活の一部になっている多くのカフェやレストランに出会う。

顔見知りが集まっている。

小さい店で値段も高くはない。

食料品店や雑貨屋もあちこちにある。

結構遅くまで開いている店もあり、 普通の生活を支えている。

   

 香港で驚いたのは、 道まで広がる市場の活気とともに、 夜遅くまで生鮮食料品の店が開いていることだった。

それも高層住宅の足元に広がり、 住宅に冷蔵庫はいらない。

   

 繁華街をはずれると日本の都心の夜はさびしくなる。

今、 街の常夜燈となっているのは、 自動販売機と24時間のコンビニエンスストア。

確かにこの2つが日常生活を支えているところもあるが、 コンビニでの商品は限られており、 値段も割高なことを考えると、 普通の食生活を支えているとは言い難い。

それに働く人の昼食をだすところが夜には酒を飲むことが中心になり、 ますます普通の夕食を楽しむ場は限られる。

   

 住むことと食べる魅力は鶏と卵のようなもので、 住む人がいないから店が減る。

店が減ると住む魅力がない。

かといって店が先にできても成り立たない。

震災後の店の再建の難しさと同じで、 生活と店の共存関係がまちの魅力なのであるが、 これを失うと取り戻すのは結構大変なことである。

   

左三角前に 上三角目次へ 三角印次へ


このページへのご意見は前田裕資

都市環境デザイン会議関西ブロック JUDI Kansai

キーワード集メインページへ
JUDIホームページへ
学芸出版社ホームページへ