まちに暮らす魅力の1つは生活時間の選択性が高いこと。しかし生活者が少なくなると生活に必要な基本機能の選択性が低下する。
食べることは生活の基本である。
ヨーロッパを旅していると、 都心で日常生活の一部になっている多くのカフェやレストランに出会う。
顔見知りが集まっている。
小さい店で値段も高くはない。
食料品店や雑貨屋もあちこちにある。
結構遅くまで開いている店もあり、 普通の生活を支えている。
香港で驚いたのは、 道まで広がる市場の活気とともに、 夜遅くまで生鮮食料品の店が開いていることだった。
それも高層住宅の足元に広がり、 住宅に冷蔵庫はいらない。
繁華街をはずれると日本の都心の夜はさびしくなる。
今、 街の常夜燈となっているのは、 自動販売機と24時間のコンビニエンスストア。
確かにこの2つが日常生活を支えているところもあるが、 コンビニでの商品は限られており、 値段も割高なことを考えると、 普通の食生活を支えているとは言い難い。
それに働く人の昼食をだすところが夜には酒を飲むことが中心になり、 ますます普通の夕食を楽しむ場は限られる。
住むことと食べる魅力は鶏と卵のようなもので、 住む人がいないから店が減る。
店が減ると住む魅力がない。
かといって店が先にできても成り立たない。
震災後の店の再建の難しさと同じで、 生活と店の共存関係がまちの魅力なのであるが、 これを失うと取り戻すのは結構大変なことである。