喧噪の都心の中でこそ味わえる、 一人になれる空間。茶室のような都市の中の非日常性と他界感が得られる一時的遁世の空間は貴重である。
茶室は、 当時の大都市、 堺の街割りパターンの裂け目のような場所に立地することによって、 都心での生活の中に非日常性と他界感を創出していたのである。
それは、 いつでも日常生活に戻れることを前提に気軽に一時の非日常性のある「遁世の時間」を味わえ、 家でも職場でも得ることが出来ない自分ひとりになれる空間である。
このような喧噪の都心の中でこそ味わえる、 ひとりになれる空間。
茶室のような「都心の庵」ともいえる空間は、 都心居住者にとって貴重である。
さて、 現代都市ではそれはどこにあるのだろう。
たとえば、 それは、 高層ビルに囲まれた喫茶店や気心の知れた飲み屋のカウンターにも見つけられる。
できればそこから都心を覗ける窓際の席があればなおよい。
「都心の庵」は街区パターンからはみ出した街の裂け目にある。
そこからは普段見慣れないお寺の屋根や自然の滲みだしが見えるだろう。
そこは、 都心に住む者にとってのアジールである。