都心の通学路ではいろいろな加工業種が見られ、 手作業で生活品が作られていく。これはさしづめ『まちの博物館』である。
特に都会の子供は自然に恵まれていないし受験勉強などで忙しい。
ましてや遊ぶ場所も少なく家に居ることが多い。
豊中から岡町にかけての旧街道沿いのまちにはいろいろな業種の職業人が店を構えている。
登校途中の子供たちが、 朝忙しくしている豆腐屋の前に立ち止まり、 独特の匂いのある大豆のしぼり汁に苦汁を加え、 豆腐が透明の水のなかに出来上がっていく過程に見入っている。
下校時には、 藁やいぐさのにおいのする畳屋の前で、 表張りの機械の向こうで働く手縫いの職人さんを眺めている。
製材所の前では回転ノコの音や匂いから、 新しい木、 時間を経過した木、 固い木、 柔らかい木などを言い当て、 石工屋の軒下ではノミで削られていく石肌と磨きのかけられた石肌の違いに驚きを感じている。
都心地域にはこのような機会や場所がまだまだ残されている。
子どもたちをはじめとする居住者はさまざまなモノの加工工程を、 匂い・音・視覚などの五感で感じることができる。
それは決して郊外住宅地では見ることのできない光景である。
これはさしづめ『まちの博物館』である。