近代都市のまちの表情は、 単に古いからではなく、 現代都市が失いつつあるシルエットとディテールの美によって人びとを魅了する。
ニューヨークでも、 戦後多くの建物がつくられたが、 ニューヨーカーがニューヨークらしいと感じるものは、 どうも戦前のものが多いようである。
建築物で言えば、 戦後のロックフェラーセンター・国連・ワールドトレードセンター(WTC)などと、 戦前のクライスラービル・エンパイアステートビル・フラットアイアンビル・ウールワースタワーなどを比べると、 多くの人にとっての印象度の深さは、 戦前のものの方が勝るようである。
実際、 テレビに登場するニューヨークの風景では、 アメリカでも日本でも戦前のものを主体にした風景が多い。
近代建築物・土木構造物に人々が心ひかれるのは、 単に古いからではなく、 現代が失ったシルエットの美しさ、 洗練されたれディテールのためかもしれない。
そして、 こうした陰影のあるまちの表情が、 住む人間にある種の安堵感を与えている。