混じりあう―時きが混じりあう
左三角
前に 上三角目次へ 三角印次へ

景観変化抑制型デザイン

大阪芸術大学 田端 修

* * *
われわれは「都市は変わるもの」と思い込んできたところがある。

人が住む場所は変わり過ぎないほうが好ましいのではないか。

変化を抑制する環境デザインの手法開発が必要だ。

* * *

画像t108-1 日本の都市ではスクラップアンドビルド方式が普通だが、 これは外壁だけ残して、 さあこれから中身を造ろうというヨーロッパ都市では見慣れた風景(パリ)
画像t108-2 歴史環境保全を目的とする「指定建築物」の更新例。

在来棟両袖部は保存、 中央部は現代的なデザインにより機能拡充をはかっている(ロンドン、 シティ)

画像t108-3 わが国でもこのような手法が採られはじめた。

表通り側は外壁保存、 背側面で必要な床面積を確保した建替え事例。

まちの景色を守りながら機能を拡充できる(京都市中京郵便局)

見慣れた風景の中に住む安心

 まちが変わり過ぎることは心を泡立たせ、 ひとの気持ちを蝕むところがある。

とりわけ高齢者にとっては、 環境の急激な変化は、 不安を醸成し、 さらに精神的・肉体的な打撃にもつながる。

   

 このような意味からは、 まちの中心となる風景や見慣れた形を維持・保全することは、 安心して住むための条件であり、 結果として住みやすさの増大につながる方策でもある。

変動のエネルギーの強い都心ではこのことにいっそうの関心を払い、 対応すべきである。

   

 「つくっては壊す」を繰り返すスクラップアンドビルド方式から、 ストックをつくる都市環境デザインへと方向転換をはかる必要がある。

   

変化抑制型デザイン手法の開発

 このとき、 がちがちの固まった博物館型の環境にしてしまうのは拙い。

通時的連続性の感覚を生み出す環境デザイン手法の開発、 修復型の建築物や市街地形成に人びとを誘導する魅力的な都市デザイン手法の整備などを進めなければならない。

また同時に、 使い手や求められる機能が変わっても使い回しのできる都市づくりの論理とデザインも必要である。

   

左三角前に 上三角目次へ 三角印次へ


このページへのご意見は前田裕資

都市環境デザイン会議関西ブロック JUDI Kansai

キーワード集メインページへ
JUDIホームページへ
学芸出版社ホームページへ