コミュニティー道路の理念と向う三軒両隣の構造を複合建物の内部に取り入れ、 路地空間の復活と下町コミュニティの再編を図る。
約400年の町割りの形態を引き継ぐ神田。
かつて表通りには卯建を構える表店、 裏通りには路地を挟んで九間棟割長屋が連鎖的に並んでいた。
その構造から“向う三軒両隣”という下町共同体としてのコミュニティが育まれ、 江戸の大火を始め、 帝都復興・震災、 戦災そしてバブルなどの建てては壊される災難にも耐え、 根強く生き残ってきた。
しかし低層部は店舗・事務所、 上層部は住宅のように分離された機能化一辺倒の構造により、 フロアー間の繋がりも建物一体としてのまとまりも、 また地域住民との交流さえも無くしている。
こんな所に長居する住人は数少ない。
棟内のレイアウトは、 都心居住の前提条件でもある“ふれあいと不干渉の両立”を満足させるため、 住戸の間には隙間を設け、 それぞれ施設を独立させた上で、 かつての昭和の初め、 神田の町を一世風靡した看板建築風の店舗兼三世代住宅も連ねていった。