再開発で新たにつくられる立体下町型の居住形態にとって、 まちの環境構造としてのボイド(なにもない)な空間の計画と建物のスケールは、 重要な要素である。
阪神間の駅前近傍には、 多くの住宅が下町型の都心居住形態をとどめていた。
今回の阪神淡路大震災で、 その多くがなくなってしまった。
新たにつくられる住宅には、 再開発の形態をとるものもある。
しかし、 従来の再開発のような巨大な建築物が、 新しい下町型の建築形態であろうか? 新たにまちの環境骨格としての公共空間をつくりだし、 その結果、 高密な居住形態がつくられることは、 必ずしも経済効率だけの話でなく必要なことであろう。
しかし、 問題はその作り方である。
人間に気持ちの良いスケールやマスボリュームによる構成こそが、 なによりも重要だ。
これこそが、 多少の経済的負担を強いてでも実現しなくてはならない要素なのではないか。
なんといっても、 人間が住み、 暮らすまちである。
巨大なマスボリュームの建築は気持ちよくないし、 そんな建築の多いまちは、 住んで気持ちのよいまちには決してならない。
やみくもな南面住宅志向もいいかげんに卒業しなくてはならない。
しかし、 この問題は、 人間の生活の場が住宅の内部だけでなく、 屋外空間も含めたトータルな場、 つまり、 まちが楽しくなることと密接な関連がある。
表裏一体とでも言えるかも知れない。
昔の下町長屋が、 陽のあたる南北の道に面して生活感あふれる花や緑で飾られていたことを振り返り、 新しい都心居住としての立体下町をつくろうではないか。