現在は千葉大学で環境デザインを教えていますが、 赴任する前はアメリカのジャーディ・パートナーシップ社のシニア・デザイナーとして世界各地の都市計画や施設開発に参画していました。
今日のテーマである都市の仮想性といった話題では、 よく、 ジャーディ社のデザインによる「ホートンプラザ」であるとか「キャナルシティ博多」、 更にラスベガスのプロジェクトやユニバーサル・シティのプロジェクトなどが取り上げらます。 そこで今日はそれらを設計をした側からコメントを加えようと思います。
そのほかに、 人間は知的な生物として、 自分以外の人、 社会、 環境との相互関係において自我を確立したり、 愛を感じたり、 これはいいか悪いかという社会的な判断基準を確立していきます。 この自分以外の外界と交わろうとする欲求を「関係欲」あるいは「関係欲求」と呼びます。 先ほどのお話じゃないですが、 遺伝子としてずっと昔から組み込まれているのかもしれません。 ところが最近の都市に生活する人々は「関係欲」という外界との交わりがかなり希薄になっているんじゃないかという気がします。
「キャナルシティ博多」のプロジェクトではこの関係欲に着目して、 利用者ができるだけ自分と自分以外の世界との交わり・コミニュケーションを多く持てる施設開発を目指しました。 このコミニュケーションをどうやって活性させるかについて、 いくつか手法がありますが、 そのうちの代表的な計画手法を3つレジュメに書きました。
商業施設を計画する際、 商品であるとか、 ホテルなどのサービスであるといった要素がよくコンテンツとして取り上げられますけれども、 ここでわれわれが考えた要素は、 売ったり買ったりするものだけではなくて、 都市生活の中で享受できるもの、 つまり人々が外界から受け取ることのできるすべての要素です。 都市の環境は様々な要素で構成されていて、 そこから様々な情報を送っている。 人それぞれ受け取り方が違うと思いますが、 そういう情報を受け取って、 都市を体験しています。 だから情報の発信源であるコンテンツをデザイン対象とすることはすごく大事なことです。
これを「シナリオ」という概念で表しました。 テーマパークを計画するときにはよくこのシナリオライティングの手法を採るわけですけれども、 「キャナルシティ博多」を計画したときは、 いろいろなシナリオを沢山かきました。 そしてそれらを積極的に組み合わせました。 都市の面白さというものは、 いろんなものが入ってきて、 いろんな価値、 いろんな人、 お金、 情報が入り乱れてぶつかって、 化学反応が起きて新しい文化ができていく、 というところにあると思います。 だから、 まとまった、 一つの大きな流れのシナリオをつくるというよりは、 いろんなシナリオをいっぱいそこへ詰め込んでぶつけあっていく作業をしました。
要は、 コンテンツであるとかシナリオを、 どういうふうに人々が受け取りやすくするかということです。 環境の中にそういう要素をどうやって表出させていくか、 人々に体験してもらうか、 そのための環境演出はどうあるべきか、 というようなことに注意を払いました。 この辺がこれまでのプロジェクトというか、 街のつくり方とか施設のつくり方とはちょっと違うという気がします。
この考え方を具体的に説明するためにスライドを使いたいと思います。
たとえば周りの街を「リアル」とすると、 もしかしたら「アンリアル」かもしれません。 外観の印象が日常的な都市の光景に比べてかなり非日常的な感じがするプロジェクトと受け取られるようですが、 設計サイドとしては、 デザインのなかに込めた都市と人間の関係が、 そしてそこでの体験がリアルか否かで判断して欲しいと思います(写真1)。
われわれが計画に参画する以前の10年、 日本の設計事務所が再開発計画を進めていました。 それは、 経済性・生産性を重要視し、 効率のいい動線計画、 公開空地のとり方など無駄のない、 いわゆる近代理論の完成形といいますか、 そういう形でデザインされていました。
キャナルシティのクライアントは福岡地所ですが、 彼らは日本の設計事務所の提案を見て「次の時代の都市のあるべき姿とは何か違うんじゃないか」と感じたようです。 そして彼らが世界中旅をして、 出会ったのがサンディエゴのホートンプラザというプロジェクトです。 外観はかなりテーマパーク的な、 遊園地的な見方もできるプロジェクトですが、 都市と人との関係、 或いは環境を実体験するという意味において極めてリアリティーのある施設だと思います(写真2)。
このホートンプラザは、 先ほど言ったようなシナリオであるとかコンテンツであるとかいった手法を使って、 ビルとビルとの間、 言い換えれば一般の人が最も多く関与できる公共空間で、 人々がいい都市体験をできることを優先してデザインしている点がこれまでの都市開発と異なる点です。 福岡地所の人達はこの点を見抜いた訳です。
ホートンはそれまで日本ではほとんど知る人がいませんでした。
そしてまず、 博多の中を徹底的に歩き回って、 いろいろな価値をわれわれなりに発見していくという作業をしました。 それを白地図の上にプロットして、 いろいろ描き込んでゆきました。 これはわれわれにとっては非常に重要な情報となりました。
今世紀あるいは産業革命以後、 都市においても最も大事な価値は、 生産性、 効率、 経済性でした。 そういう時代には、 たとえば福岡では天神地区であるとか、 あるいはJR博多駅前の立地が非常に価値を持っていたわけです。 ところが、 アメリカ人たちと一緒に歩き回ってわれわれが見つけたのは、 たとえば、 那珂川とか、 博多川とかいった環境資産です。 それから博多祇園山笠で有名な串田神社があったり、 住吉神社があったりという歴史的な資産です。 博多固有の価値のあるコンテンツです。
短期的に見ると、 たとえば20世紀のタイムスパンのなかでは、 駅前立地とか商業集積であるとかといった要素にリアリティーがありますが、 もう少し長期的なあるいは普遍的な価値としてみると、 環境であるとか歴史などがもっとリアリティのあるコンテンツではないでしょうか。
ところが人間に照準を合わせてみると、 多くの人が居る場が一番大事なはずです。 そこはどこかというと、 建築ではなくその隙間、 いわゆる共用スペース、 不特定多数の人が介在するビルとビルの間なわけです。 そこである方法を編み出しました。 最初ボテッと大きな粘土の固まりを盛りまして、 そこをスプーンでえぐるようにして、 人々の動き活動を想定して、 空間の形を決める。 環境の形を決める。 中身を決めていく。 で、 最終的に残った粘土が建築になっていくという、 これまでの計画手法にくらべて逆転の発想的な設計プロセスを採りました(写真3)。
最終的に空間の形を大事にしたが結果、 現在あるような円形のプラザができ、 プラザのまわりには、 ある意味でこれまでに無い建築ができたということです。
どういうことかと言いますと、 施工は大手4社のゼネコンが入りました。 そうするとプラザを囲む連続したバルコニーの途中に工事区分がきちゃうわけです。 普通だとA工区、 B工区と区切られAのビルとBのビルが独立して建つような建て方なんですが、 それではすき間の形が犠牲になりがちなんです。 大規模プロジェクトでは大勢の実施設計を担当する人がビル一つ一つを、 あるいは個々のディティールを担当します。 ところが隙間の空間の形を見ている人が居ません。 そしてそこがどんどん犠牲になる。
ただやっぱり、 中の人間のことを考えると隙間、 そしてその中味・コンテンツこそが大事な部分です。
普通は建築のことを一生懸命考えながら計画しますが、 キャナルシティは今言ったビルとビルとの間にデザインを集中しながらそのコンテンツを詰め込み、 どういう環境をつくり込んでいくか、 そこでどういう情報を発信して、 人々がどういう体験をしていくかということを第一に考えました。 それがデザインの形を決める根拠になっています。
歩行者レベルの絵を描いて検討する時も、 どういうふうな街の見え方をするのか、 どういうようなことを体験していくのか、 具体的にそこにどんなコンテンツを入れ、 人々が何を体験するかをシナリオを書きながら徹底的に検証していくわけです。 実際問題、 オフィスビルがあったり劇場があったりするわけですが、 この段階ではできるだけ建築としての表現はしません。
すでに、 既存の博多川から施設のの中にキャナル・運河を引き込んで、 敷地を貫通し、 また元の川へ戻すというマスタープランができあがりました(写真4)。
それから8年間プロジェクトを続けましたが、 この運河は最後まで死守しました。 というのも途中でバブル経済がはじけ、 こういう非効率的な運河なんてやめようという話が何度も出ましたが、 無駄じゃないんだ、 次の時代はこれが一番価値のでてくるこのプロジェクトの命なんだ、 だからこれはもう絶対つくらなきゃいけない。 クライアントは割合理解を示してくれたのですが、 お金を出資するテナントさんから猛反対されました。 そこをなんとか説得して実現したわけです。 キャナルはシナリオの骨格となり、 この施設の全ての活動が運河を介して展開していきます。
皆さんご存じだと思いますが、 ホテルは、 宿泊機能・飲食機能・宴会場機能がそれぞれ収益の30パーセントずつ、 それから残り10パーセントが商品を売るリテール機能です。 これを効率良くつくろうとすると、 一つの箱の中に全部うまくパッケージングして、 ほとんど歩かなくてもそれぞれのところにいける、 ホテル側からすると搬入経路など効率の良い動線計画をするのですが、 このプロジェクトではあえてそれを否定して、 ばらばらにしました。
たとえば、 客室棟とバンケット棟をわざわざばらばらにして街の中に散りばめました。 こうすることで客室棟にある小さなチャペルで結婚式を挙げたカップルが、 バージンロードの橋を渡って、 向こうのバンケット棟でパーティーをする、 といったシナリオが出来上がります。 で、 街の人たちが鐘の音を聞きつけて橋を見上げると、 花嫁さんと花婿さんが行進していく、 それをみんなで祝福する。 こうして豊かな街のストーリーが出来上がる。 こんな風にしてそれぞれの空間にシナリオがある。 それがいろんな所ででぶつかり合っていきます(写真5)。
ランドスケープを担当したEDAWというグループは、 運河廻りの計画やペービングのデザインをやっています。 彼らはいろいろなストーリーを詰め込んでいく。 いろいろなコンテンツをピックアップしてきて環境の中に入れ込むわけです。 彼らは水の中の生物のストーリーであるとか、 化石のストーリーであるとか様々なシナリオを書いてくれました。
こうした様々な専門家がストーリーを積み重ねて最終的にできたデザインがキャナルシティです。 たとえば北側の方は既存の街からつながる都市的なコンテクスト、 南側の方は川とか博多湾につながっていくような自然的なコンテクスト、 それらが施設の中でぶつかり合う。 南側はかなり緩やかなカーブだとかちょっとぼさぼさの、 つまり自然的な植栽を使っています。 北側は直線であるとか、 きれいに刈り込まれた植栽であるとかを使っています。 それらがぶつかり合い、 変わっていく(写真6)。
キャナルに使われている小さな石っころひとつにしてもストーリーがあります。 日本の建築は特にそうなんですが、 ステンレスとかガラスであるとか磨いた石であるとか、 そんな素材が使われてきました。 先程「つるつるぴかぴか」というすごくいい表現がありました。 日本の建築はみんなそんなんです。 見かけはかっこいいんですが何も伝わってこない。 そうではなくてたとえば石っころ一つに化石のような模様がある。 そうすると子供たちはそこからいろいろな想像を膨らませ物語を読みとることができると思うんです。 これを寓意性と呼んでいますが、 いかに物語性を詰め込むことができるか、 テーマパーク分野が培った手法です。 たとえばこの石っころが発信する情報の量、 あるいは人間との間に発生するコミニュケーションの量ですよね、 そういったものがたくさんあるんじゃないか。 テーマパークにリアリティーは無いと言う見方もありますけど、 人間と環境の間に対話がある。 都市をデザインするとき、 これはすごく重要なことだと思います(写真7)。
そんなようなシナリオが集積していって全体の計画、 全体の外観ができあがっていく。
遠くから見ると楽しみがいっぱい詰まったおもちゃ箱に見えませんか。 一つ一つのところにそれぞれ素敵な物語が詰め込まれているんですけれど、 実をいいますと、 先程のお話にもありました擬石を使っています。 でもそれは物語を表現する手段で、 大事なのはその中味、 物語のコンテンツとそれを人々がどう体験するかというシナリオです。
われわれにとって非常に刺激になりました。 彼らが持っている独特の空間観とか、 シナリオ展開であるとかが、 建築や都市の専門家と合体すると、 結構面白いものができました。
ジャーディの事務所でやったラスベガスのトレジャー・アイランドのプロジェクトでもそうです。 ダウンタウンをザ・ストリップという大通りが通っていて、 そのすぐ脇で、 海賊船とイギリスの軍艦が戦争をやるシーンがあるんです。 非日常的なアンリアルな仮想の世界です。 でもそれが実際の街、 つまりリアルな場でで行われる。 80年代アメリカ全体の景気は今の日本のように低迷してましたが、 ラスベガスだけは非常に成長を続けた理由の一端はこんな所にあるのかもしれませんね(写真8)。
「キャナルシティ博多」に戻ります。 これも日常空間の中に非日常的な空間が同居しています。
私はプロデューサー的な立場から最初から一番最後の開業まで担当しましたが、 このプロジェクトは様々な専門家が順次参加しました。 ジャーディ社の中からは建築・プランニング・インテリア・クライテリア、 いろんな職種の人間がそれぞれの段階ごとに参加してきました。
特に建築家が入ってきた段階で、 かなり最初のプランニングとは変わってきた。 私はこれはやりすぎじゃないかなっていう感じで、 チーム内でいろいろやりとりがあったんです。 でもいま考えてみると、 街はいろんな人がいろんな価値を持ってくる、 嫌いな部分もあっていいんじゃないか、 だからもしかしたらこれが好きになる時がくるのかな、 っていう気もします。 でも今はまだちょっと、 、 、 。
街の中を歩くとたとえばこんな空中ブランコのショーに遭遇する。 非日常的な出来事、 ほとんどテーマパークな仮想現実かもしれない。 でもたのしいですよね。 楽しみを求める事は人間の基本的な欲求です。 これからの都市デザインではどんな楽しみをどう組み立てるかがキーになります。 米国のディベロッパーはSC・ショッピングセンターからEC・エンターテイメントセンター事業へと産業構造の改革に取り組んでいて、 この流れに乗り遅れるディベロッパーの淘汰が始まっています(写真9)。
あるところではこんな小さな出来事に遭遇、 穴から小さいビー玉のような水がぴょんぴょん跳び出ます。 子供たちは大喜びで、 もうほとんどびしょびしょになりながら遊んでいます(写真10)。
開業したあと、 いろいろなプレスの人たちがいまだに写真を撮りに来ます。 普段はここはショッピングモールで、 日常的な買い物をするところだけれども、 ふっと見あげるとこういうような非日常的な光景が展開されています。 ある意味では仮想的な部分が、 日常生活・空間のすぐ隣に展開している楽しさがあります。
これはキャナルを始める前に私が担当していたファッション・アイランドというプロジェクトで、 改修計画です。 もとは1960年・70年代の、 効率を追求した物質消費時代の落とし子です。 30mぐらいのモールは効率よく買い物をするには機能しました。 ところが時間消費、 空間消費の現在では非常に間の抜けた空間です。 そして人が集まらなくなった。 それを改修するときに、 間の抜けた空間の中にいろいろ細かいテクスチャーをたくさん埋め込んでいった、 小さな店を詰め込んで人々が時間を過ごすために居心地の良い空間に変えていきました(写真11)。
このリニューアルのために何をデザインしたかというと、 建築的なデザインではなく、 そこで人々が何を体験していくか、 ということです。 イベントのデザイン、 都市の活動のデザイン、 都市生活のデザインなどいわばソフトを重視したデザイン作業です。 これら様々なソフトをすべてを組み合わせ、 あるいはぶつけ合いながらうまくオーケストレーションしていく、 環境デザインとはコンポーザーの作業とよくにています。
ニューヨークの良さは、 ストリートにいろいろなアクティビティ、 楽しみがあるというところです。 ここもご多分に漏れず、 近代理論による再開発が盛んで、 どんどん街がブラックボックス化していく、 中で何をやってるか全然わかんなくなっちゃう。 だからこのプロジェクトで提案したことは、 ビルの中のアクティビティ、 ビルの中の生活・活動などの中身をできるだけ外へ表出してください、 ということでした(写真12)。
ブラックボックス回避の考えは「キャナルシティ博多」の中のグランド・ハイアットという5つ星の高級ホテルのデザインにも生かされました。 高級ホテルは普通、 中でどんな活動が行われているかを外へ出さないんですが、 ハイアット・インターナショナル社を一生懸命説得して、 できるだけガラスをたくさん使って、 ホテルの中の優雅な活動や生活を、 キャナルを挟んで対峙するモールから見えるようにデザインしました。 買い物篭を下げてダイエーに買い物にきたおばちゃんたちがタキシード・イブニングドレスの優雅な世界をかいま見る。 そして「よし今度は自分も」という動機を誘発させるわけです。 このようにダイエーとグランドハイアットを融合していく。 一見ミスマッチな施設配置、 あるいは見え隠れする動線計画を積極的につくりました。 普通の商店街と高級ホテルを隣り合わせ配置してどちらか一方からもう一方を見た場合、 これは仮想世界を見ることになる。 買い物にきたおばちゃんにとっては、 こちら側のホテルの高級なシーンはほとんど仮想の世界です(写真13)。
ウエストロサンジェルスのウエストサイドパビリオンです。 これまでのショッピングセンターの多くは街に対して巨大壁面を露出させました。 そうすると周りの街は死んでしまう。 ここではこの問題を回避するため、 サービス動線、 荷捌き用の通路側にも、 わざわざ窓をつくって、 搬入の人を見せてしまうことをやりました。 こうしたとてもリアルな都市の活動を外の街にたいして見せることで施設は廻りの街に語り始め、 双方の環境が息づいてくるんです(写真14)。
中身を見せることが大事なことは何度も言いました。 中身は必ずしも商品だけじゃない。 そこにいる人々、 生活、 活動、 歴史、 物語様々な要素です。 これも一つの大きなショッピングセンターですけれども、 長い時間かけて多くの人によりつくられたように見せるために、 小さく小割にしてさまざまな物語を演出する環境を目指しました。
人々が自分以外の外界、 環境と言っても良いと思いますが、 自分以外の世界と交流できる環境が大事なんです。 それは仮想でも現実でもいい。 まずは関係欲を充足する交流を実体験する事です。 しかしそんなに遠く離れちゃうと見えない、 聞こえない、 つまり実体験出来ない訳です。 人の表情が読みとれる距離は3層ぐらいが限度です。 キャナルシティは結果的に大きなボリュームと壁面のある建物、 施設になりましたけれども、 歩行者レベルからの3層に限ってはできるだけこういうガラス張りなどで建築の内と外の交流を活性化することを意図しました。 コンテンツを最大限見せようとするビジュアル・マーチャンダイジングの考え方を都市計画の規模で展開しました。
照明デザイナーのジョー・キャプラン、 水のデザインのウェット、 我々プラニング・建築との共同作業は思いもかけない環境が演出が出来ました。 キャニオン状のモールに差し込んだ光が水に反射して壁面に揺らぎを映し出すために水に動きを与えました(写真15)。
あるいは何か特別なイベントをやるときは、 色々な仕掛けを備えました。 このブリッジは、 普段多くの人が渡るところですが、 イベント時にはこうしてファンファーレを奏でる人たちがずらっと並ぶ、 更に霧が漂ったり噴水がでたり様々な環境演出を考慮した結果です(写真16)。
たとえばこういう見方もできます。 古典的な手法ですけれども、 建物を黒く塗りつぶして、 空地や道を白く残すという、 フィギア・グラウンドマッピングという手法です。
これは20世紀の近代理論で建てられたセンチュリー・シティーです。 日本でいうと東京の臨海副都心とか、 幕張新都心とか、 MM21というような、 そういうところです(写真17)。
これはヴェニスのサンマルコ広場。 先ほどと同じスケールです。
たとえば100m歩くのに、 さっきの街だったら1分か2分で歩いちゃう。 でもきっとここだったら30分か1時間かかる。 何が違うかっていうと、 そこに詰め込まれている「もの」や「こと」の密度です。 この密度の差が場の体験による精神的作用に影響を及ぼします。 例えば楽しさ、 不安、 期待を感じる頻度が異なる、 それが1分か30分かの差となるわけです。 その辺にリアリティとか、 仮想とかってことを考える一つのヒントがあるんじゃないかと思います(写真18)。
これは最初に紹介したサンディエゴのホートンプラザですけれども、 とにかく徹底的に人間の活動、 そこで何を体験するか、 そこを一番重要視した都市づくりです。 開業してから十数年経ちますが集客力が落ちていないところがすごいと思います。 それには今説明した理由によるところが大きいと思います(写真19)。
ビルとビルの隙間にいろんな人間の楽しみ、 リアルな、 そしてアンリアルな「もの」、 「こと」、 つまり人間の関係欲を満たしてくれる実体験がプログラムされている。
「キャナルシティ博多」は、 これまで私達が蓄積したノウハウを投入して、 特にキャナル周りの、 人々が集う空間を徹底的に企画デザインしていった。 それは先程言いました、 コンテンツをいっぱい詰め込む、 その上にできるだけシナリオを重ね合わせ、 ぶつけ合わせて化学反応を起こさせる。 そのための環境を演出していく。 結果として、 これは現実の街の実体験の延長として存在しながら、 ある意味ではテーマパーク的な仮想的な体験と言われることがあるわけです。 でも私はどちらでもいいんじゃないか、 そこにきた人間がどれだけ周りの環境からいろんな情報、 いろんな楽しみ、 驚き、 不安、 発見、 そういうものを受け取れるか、 つまり街を実体験しながら関係欲を充足していくことこそ、 人と街の関係のあるべき姿ではないか?そして今の都市開発に必要なこと、 そいうふうに思います(写真20)。
今日の主題からすこし離れた気もしますけれども、 何かのヒントになればと思います。
パネル報告2
都市のリアリティー
関係欲を充足する実体験千葉大学工学部工業意匠学科環境デザイン研究室 柘植喜治
関係欲と都市デザイン ―キャナルシティの考え方
基本的にわれわれ人間は食べるとか寝るという、 いわゆる人間としての基本的な欲求、 生理的な欲求を持っているわけです。
コンテンツ
一つは「コンテンツ」、 つまり中身です。
シナリオ
二つめは「シナリオ」、 今度はコンテンツをどう組み合わせていくか、 人々がどう体験していくかです。
環境デザイン
三つめは、 「環境デザイン」という概念で表現しました。
コンテンツの重視
ホートンプラザからキャナルシティへ
福岡のコンテンツを見つける
こうした経緯から我々「キャナルシティ博多」の設計チームは福岡地所に招待され日本に来ました。
ビルの隙間に潜むコンテンツ
施設を計画していくとき、 これまでは建築本体が一番大事なものと思われてきました。
シナリオの骨格「キャナル」
最初の現地調査を経て、 帰国後一週間ぐらいで描いた私のスケッチです。
様々なシナリオが重なって街が出来る
キャナルシティの中のホテルを考えてみます。
日常的・非日常的シナリオをコンポーズする
これはヒューストンのプロジェクトで、 ジョージ・ルーカスたちと一緒にチーム組んだプロジェクトです。
コンテンツを見せる街の環境演出
これはニューヨークのタイムズスクエア界隈の再開発プロジェクトです。
まとめ
今日の私の話は関係欲を充足する実体験が大事だと言うことを説明しました。
このページへのご意見は前田裕資へ
(C) by 都市環境デザイン会議関西ブロック JUDI Kansai