同様のもので固定的に設定されるものに、 有名なものでは道祖神とか、 あるいは、 かつては道祖神であったと思われますが、 近畿地方のお地蔵さんがあります。
沖縄の屋根にはシーサーが置かれていますが、 それとは別に、 沖縄のムラの入口には、 大きな石でシーサーの形をしたもの、 今はほとんど摩滅して形が分かりませんが、 そういうものをムラの入口においてあります。 そういう、 固定的なものでムラを守るというのが一つです。
もう一つ大きな系統があって、 それがこの写真1の形です。 むしろ日本全国を見ますと、 毎年、 ムラを守るための一定の装置を村境に設ける地方が多いのです。 道祖神を祀っていても、 地蔵さんを祀っていても、 それだけではムラは安全ではなく、 それに加えて必ずこのように一定の装置を設けています。 そういうものを総称して、 「道切り」と一般に呼んでいます。 これは象徴的なものです。 ほとんど、 意味がないものといえば意味がありませんが、 こういうもので、 ムラを守っていこうというものです。
人形で守るのは、 東北地方から新潟県辺りで盛んで、 特に秋田県辺りでは、 巨大な2mを越えるような人形を作って村境に毎年据えています。 関東地方の南の方に下がってまいりますと、 太い縄をなって、 恐ろしい姿としてのヘビをつくります。 口を開けて真っ赤な舌を出したヘビを村境の入口の木にかけておきます。 東京の近くの、 市川とか、 船橋辺りにもそういうことをちゃんと町内でやっている地域があります。 東京都内にもあります。
近畿地方では、 勧請縄という太い縄をなって、 それに勧請板という板をつるし、 ムラの入口の道路につるします。 多くのムラではそれを「ジャ」と呼んでおります。 ヘビです。 ですから、 関東地方の太いヘビが、 やや細い縄になったということです。
板には村内安全でありますようにということを、 お経の文句と一緒に書きます。 それに、 力があると一般には考えられています。 これこそ、 仏様の力を勧請して、 それによって村の中を安全にしようということです。
これはおそらく、 関東地方にあるようなヘビの姿があって、 それに真言、 天台系の密教が結び付いたものだろうと思います。 今では、 正月に、 天台、 真言系のお坊さんをよんで、 勧請板を作ってつり下げる行事になっています。 決して珍しいことではなく、 福井県の若狭地方から、 滋賀県の全域、 奈良県、 和歌山県辺りにも見られます。 近畿地方では、 ごく普通に見られる、 いわゆる道切り行事です。
こういうことをやって、 外から危険なものを防ぎ、 同時に中に発生した危険なもの、 あるいは汚れたものを外に排除していくということをおこなっています。 一番わかりやすいのはお葬式です。 墓地はだいたいヤマに設定されます。 ムラで発生した、 不浄のもの、 汚れたものとしての遺体を野辺送りでそのヤマの部分にある墓地へ行って埋葬します。 そして、 勧請板のところまでかえってきて、 そこで一定の儀礼が行われます。 場合によっては、 履いていった草履をそこで脱いでムラに入るといったことも行われています。 そういうふうにして、 ムラの内と外に、 大きくけじめが付けられてきたのです。
様々な村境
新潟県東蒲原郡鹿瀬町夏渡戸
写真をご覧になりますと分かりますように、 姿は男で、 恐ろしい顔をして、 腰には刀を差していています。 集落をはさんで反対側には、 女性の姿ですが、 同じように刀を差して立っています。 こういうような恐ろしげな人形を、 ムラの入口に立てるということは、 なんて古くさい、 そんなことを今でもやっているのかと思われる方がおられるかもしれませんが、 少なくないんです。 一端やめたときに、 たまたまそのムラで伝染病がはやったとか色々なことがあって、 やめることはできない。 やはり、 これが、 ムラを守っていてくれるというわけです。
このページへのご意見は都市環境デザイン会議関西ブロックへ
(C) by 都市環境デザイン会議関西ブロック JUDI Kansai