ありがとうございました。 それでは、 私からのコメントと、 若干の質問をしていきたいと思います。
今回のレジメ作成のために成瀬さんにインタビューをした折に、 図面を書いている人のセンスが伝わってくるようなお話を伺いました。 印象に残ったのは、 八王子みなみ野シティに関して、 山を残すと言っても、 高い山を残すのではなく、 現況の斜面の中腹だけを残して低い山を造っていく、 岬状に飛び出したような地形の先っぽだけを残してキュートな山をいくつか残すんだというお話です。
実際、 八王子に行きますと、 駅前から自分の家に向かう途中に幾つかの山が残っています。 毎朝通勤するときに森をくぐり抜けていくという感覚を味わえるわけです。 便利でありながら、 森から古代につながるような不思議な空間を持ったニュータウンになっていくのではないかという感じを受けました。
そういうような小山をニュータウンの中にいくつか点在させますと、 山と山が重なって見えたり、 離れて見えたりします。 そういう変化がまちのアイデンティティになるというお話をお伺いしました。
もう一つは、 現況地形を残して、 それをもとに道をつくっていかれることです。 先ほどの福田先生のお話でも「まっすぐな道はおもしろくない」というお話がありましたが、 現況地形通りに道をつくっていこうとしますと、 どうしても曲がりくねった道になります。 そのように、 曲がりくねり、 現況地形をくぐり抜ける道をつくりますと、 シークエンスの変化が生まれてきます。 そういうことをお聞きして、 これもまた、 巧まざる結果であると思いました。
デザインする方が、 最初にイメージというか、 こうでなければいけないというものを持っているのではなく、 地形と、 大地と対話していく中でできていくということです。 造園の世界には、 石に問いかけて、 どういうふうに石を置いていったらいいのかということを庭師は感ずる、 というような話があります。 まさにそういった心境ではないかと思います。
そういった感想から、 レジュメの中に夏目漱石の「夢十夜」という話を引用しました。 これは、 運慶という鎌倉時代の彫刻家がどういうわけか明治時代に現れて、 仁王さんを彫るというお話です。 彫る様があまりにも自由闊達で、 大自在の境地に達しているという彫り方をしているので、 見ている人は、 まるでに型が木の中に埋まっていて、 それを手でかき出しているのではないかと思います。 私は、 こういった寓話を、 大地の達人に置き換えてみたいと思いました。 つまり、 自然の大地の中に生命感のある都市が埋まっていて、 それを掘り起こすのが大地の達人ではないかというイメージです。
現況地形を残すということについて
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