現在、 京都市景観まちづくりセンターというところに出向しておりますが、 元々は京都市の職員です。 行政は、 住民とは違うものであるかのような声をよく聞くのですが、 私は行政は市民が一人ひとりでは出来ないことを実現するための組織であると思っています。 ですから住民のためにあり、 住民そのものであり、 住民の目的を達成するための組織であると思っています。 モノをつくるにしても、 住民が一人ひとりでは出来ないことを、 税金という形で返してもらって、 そこでつくるわけですから、 参加ではなくて自分たちのモノをつくるということなのです。 住民に今問われているのは、 自分たちのモノをつくるんだという気持ち、 行政は自分たちの代わりにやってくれているんだという気持ちだと思うんです。
公共施設を参加型でやることについては、 いろいろ議論のあるところですが、 税金を使うわけですから、 少しでも低い予算でより喜んでもらえるものをつくるということが、 参加の一つの目的であると思います。 専門家は技術的な専門知識は豊富に持っておられるわけですが、 地域における専門家はそこに住んでおられる方であり、 そこに携わっておられる方です。 デザイナーには、 予算や求められる機能といった諸条件があるわけですが、 使う当事者である住民側の意見を聞くということも諸条件の一つとして捉えて、 デザインしていただきたいと思っています。
参加型で議論を進めていくなかで、 住民の側も勉強される、 専門家も勉強されるということで、 相互に高め合うことができるし、 違った切り口の話が聞けるという意味で、 まちそのものをより深く知ることができると思うんです。 また、 地域のコミュニティが崩壊しつつあるなか、 そうした場がきっかけになり、 今まで話をしなかった人と話をする機会が生まれたりするなど、 コミュニティを再形成し活性化していく役割も持っています。
さらに住民に関わってもらったものは、 非常に大事にしてもらえるという面があります。 つくられたモノが誰が作ったのか分からないようではあまり大事にされませんが、 参加のプロセスのなかで自分が関わったものに関しては大事に長く使ってもらえるということです。 したがって当初お金がかかっても、 結果的にはコストは安くつくことになります。
ただ参加型を取った場合、 コンサルタントには非常に負担がかかるにも関わらず、 適正な評価システムが今のところありません。 コンサルタントには勉強段階であるということで今は我慢していただいていますが、 今後システム化していく場合、 そういう意味での経費も考えていかねばならないと考えています。
しかしそうしたマイナス面を考えても、 今までのような紋切り型の進め方で、 結果として反対運動が起こり、 何度も内部で練り直すといった時間のロスを考えると、 行政の人件費の削減にもなるわけで、 得るものは非常に大きいのではないかと思います。
松久:
参加型にまつわる理論的な展開から始まりましたが、 後半では実際参加されている経験に基づいたお話しが多く出てきたと思います。 もちろん参加についてそんなに単純に答えの出るものではありませんし、 これを契機に参加についてもう一度考えていただけたらと思います。 有り難うございました。
参加によって得るもの
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