参加型都市環境デザインをさぐる
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DAN計画研究所 澤村朋子

遊び心と仕事心

平野郷地区HOPEゾーン事業
大阪市平野区

 

改行マーク景観を軸にした住環境整備で、 コンサルタントとしてお手伝いする機会を得た。 場所は大阪市平野区。 平安期の征夷大将軍、 坂上田村麻呂の子によって開かれ、 中世には堺と並ぶ自治環濠都市として栄えた平野郷地区である。 大阪の中心部から約5kmという便利な場所に位置しているが、 このまちには現在でも古い町家が点在し、 歴史的雰囲気を伝えている。 そのまちなみを住環境形成に活かせないかと考えた大阪市が、 地区住民に呼びかける形で、 今回の事業は始まった。

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祭り期間の4日間、 郷内の各戸には祭り提灯がしつらえられる。
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ワークショップ「夏祭りまちなみ調査隊」では、 だんじり祭りの時期に合わせて、 まちなみの表情の変化や祭りのしつらいを調査した。
改行マーク1200年におよぶまちの歴史は、 まちなみと共に自治の精神を育んできたようだ。 それは例えば、 駅舎の保存運動から始まった「平野の町づくりを考える会」が、 行政支援を受けずに、 町づくり活動を20年にわたって続けていることからも見て取れる。 この会は、 「おもろいことをいいかげんに、 人のフンドシを当てにして町づくりをする」のだそうだ。 彼らは今夏、 町ぐるみ博物館を一斉に100館オープンさせ、 ますます意気軒昂である。 この組織のみならず、 まちを対象にして創作活動を展開する芸術家グループや、 紙芝居創作活動を中心としたお母さんたちのグループ、 圧倒的なエネルギーで繰り広げられるだんじり祭りの9つの祭礼組織など、 幾重にも重なった自立したコミュニティは、 このまちの営みの原動力となっている。

改行マーク豊富な歴史的・環境的資源、 いきのいい住民。 ここに行政の支援があれば、 まさに住民参加のお手本だろう。 しかしながら、 これらの諸条件が整っているからこそ、 つくる側とつくられる側という旧来の二項対立の中では出てこなかった、 より深刻なギャップも生じてくる。 よりよいまちにしたい、 という目標は同じであるものの、 考える方法、 行動する根拠が違う、 とでも言うのだろうか。

改行マークこれまでの、 公共デザインの過程は、 責任の所在の明確化、 専門性に基づいた役割分担など、 基本的にビジネスの論理に従っていた。 この定型化された方法では、 誰しも最小の労力で最大の効果を上げることが出来る。 しかし、 行政と地区住民では、 流れている時間が違う(数十年の事業期間を見ているのか、 子々孫々、 1000年先のことまで我が身のこととして考えるか)のだ。 この立場の違いこそが、 これまで「何となく分かる」とうやむやにしてきた多くの問題を表面化させ、 かくして議論は拡散してしまう。

改行マーク先の考える会のモットーは、 「遊び心」であり、 彼らの活動は無限の広がりを持っている。 それに対して行政や専門家が抱くのは、 熱心な「仕事心」であり、 有限の活動であるからこそ、 ものを生み出す力を持っているのではないだろうか。 この全く対立する立場に「折り合い」をつけるのが住民参加であるとすれば、 その結果出来上がるものは中途半端な、 双方にとって無益なものとなるのではないか。

改行マーク組織としての責任や感情的な要望を云々することは、 表面上の合意を生む。 しかし、 あえてそれらを廃し、 個人として正面から向きあい、 課題を細分化し吟味する。 お互いを信頼し、 任せるべき所は全面的に任せる。 この方法は膨大な時間と手間、 そしてこれまでの専門家には求められてこなかった「対話する」能力を要求する。 対話ばかりしていては何ものも生み出せないが、 住民参加のデザインを考えたとき、 それを積み上げることによってしか、 解決法はないように思う。

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