参加型都市環境デザインをさぐる
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(株)アーバンスタディ研究所 森川稔

“住居兼アトリエ”として町家を活用する

町家再生のまちづくり
京都・西陣

 

改行マーク西陣は500年以上の歴史をもつ織物のまち。職人たちが町家に居住する、 職住一体のまちとして知られている。 しかし、 織物産業の不況や住みづらさなどから、 近年は空家となる町家が増え、 マンションなどへの建て替えも進んでいる。 その一方で、 西陣で創作活動や商売に取り組みたいという希望者も多い。

改行マーク「西陣活性化実顕地をつくる会(ネットワーク西陣)」は、 こうした西陣のまちを「住んでも来ても楽しいまち」にしたいとの思いから、 1995年11月に発足した住民組織(NPO)である。 空家となった町家を、 アーティストや商売人に活用してもらおうと、 貸し手と借り手をつなぐネットワークづくりを進めている。 借り手は各人が自力で、 自らの理想にかなった町家を探してくる。 ネットワーク西陣は、 探し方や貸し手との交渉をスムーズに行うための人の紹介、 改修するうえでのコツなどを伝授して、 借り手をサポートする。 すでに30件近くの町家が「住居兼アトリエ」として再生・活用されている。 入居者の多くは20歳代の若者である。

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多国籍料理と雑貨の店“心呼吸” 空き町家活用第1号のレトロ雑貨“龍華堂”・舞妓変身処“華憧” ネットワーク西陣が制作した2畳ほどの大きさの“西陣村マップ”
 

改行マークものづくりのまちである西陣は、 ものを生み出す潜在力、 可能性を秘めている。 ものづくりに励む若者に対して、 厳しさと同時に寛容さをそなえている。 そうした西陣で、 若い芸術家に育ってもらおうというのである。 活用された町家はどれも、 外観は大きく変わっていないが、 内装は思い思いに工夫・演出されている。 大仰に改装するのではなく、 手作りの改装で、 自らの思いを込めた空間が創られている。 どの町家も老朽化が進んでいるため、 かえって気軽に改装が行え、 おもしろい空間づくりを可能にしている。

改行マーク町家の味わいを理解し、 町家に住むこと、 町なかで生活することが好きな人に活用してもらうことが大切である。 町家を楽しめる人でないとダメである。

改行マーク職人のまちであっただけに、 西陣にはおもしろいものが散らばっている。 ものづくりに励む人たちがいて、 町家に住むことを楽しむ人たちがいる。 そうした人たちがなんとなく一体になって、 生き生きとしたまちをつくっていく。

改行マークネットワーク西陣の取り組みは、 そうした新たな担い手=居住者の定住を促すことによって、 西陣の資産である町家を保全し、 ものづくりのまち“西陣”の再生を進めようとするものである。 今、 点となっている町家の活用を線に、 さらに面へと広げていくために、 新たな組織への展開が進められている。

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