参加型都市環境デザインをさぐる
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京・まち・ねっと 石本幸良/石本智子
京都の都心界隈でのまちづくり
姉小路界隈を考える会 京都市中京区 |
考える会の設立
姉小路界隈は、 京都の都心部にあって、 比較的町家が残り、 人が住み、 昔ながらの暮らしの有りようが残されている地域である。 会は、 平成7年10月、 姉小路通を中心に、 北は御池通、 南は三条通、 東西は河原町通と烏丸通間の住民が参加して発足した。
マンション建設反対運動をきっかけに発足した会であったが、 建物の高さやデザインの規制といった各論から入るのではなく、 まずまちを再発見し、 みんなが納得できるまちの方向を探っていくことを目的とした。 様々な場面で意見が食い違った際に、 立ち帰る基本視点を、 まずつくることを主眼としたためである。
会の活動概要
洗練された伝統技術を持つ職人とそれを育む老舗とが、 実に数多く存在しながら、 当たり前のようにまちにとけ込んでいる界隈。 会ではそれらの老舗に掲げられた著名な書家による看板に着目し、 「看板の似合うまちづくり」を最初のキーワードとして取り組んだ。 現在も大変好評を博し活動の一つの柱でもある「にんげんマップシリーズ」は、 界隈に住む老舗のご主人や職人の方にお話を伺い、 紹介していく企画である。
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灯りでむすぶ姉小路界隈
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また、 町並みにとけ込んでいる看板を浮かび上がらせようと、 看板や町家を地蔵盆の夜にライトアップする企画も生まれた。 この企画は、 専門家の講演から昔の辻行灯に広がり、 まちの灯りに発展した。 そこで、 地蔵盆を前にまちの大人は行灯を、 子どもたちはペットボトルの提灯を手作りするようになる。 行灯は通り沿いに並べられ、 ライトアップされた看板や町家を見やりながら、 人々は提灯を手に、 通りを行き来する。 「灯りでむすぶ姉小路界隈」と題したこの企画は、 9年度から続けられ地域の恒例行事として定着している。
さらに、 界隈のみち空間について取り上げたワークショップの結果を受け、 「花と緑でもてなす姉小路界隈」を次のテーマとして浮かび上がった。 まちの人たちが、 この界隈に似合う鉢植えづくりに取り組み、 通りに並べて、 もてなしの心を表現する。 鉢植えを題材として、 それぞれの個性は保ちつつも、 全体(界隈)との調和を考える機会になった取組である。 これらの取組の内容は、 会報としてまとめ、 年に4回のペースで、 会員に配布している。
また、 会では平成10年6月、 周辺の市民活動グループに呼びかけ、 都心界隈において相互に連携協力する連絡会「都心界隈まちづくりネット」を立ち上げた。 活動の輪は、 ネット設立の際のシンポジウムがきっかけとなり、 近隣町内会にも広がっている。 こうした活動の広がりは、 まちの人たちが自分たちのまちの将来像を話し合っていくうえで、 大変重要な素地になるのではないかと考えている。
パートナーシップ型まちづくりの試み
会の設立のきっかけとなった、 マンション建設計画は、 平成8年3月に白紙撤回されたが、 その後、 「地元に受け入れられ、 相互に享受し合える施設建設を目指したい」として、 地権者より地元との意見交換の申し入れがあった。 これを受けて、 会が近隣町内会に呼びかけ協議、 提案を受け入れることで合意した。 こうして、 平成11年1月には、 「地域共生の土地利用検討会」が発足した。 本会は、 検討会の委員として、 また地元の連絡窓口として参加し、 協議を重ねている。
まとめ:まちづくりと地域の特殊性
活動を続けていくなかで、 折に触れ、 京都のまちなかの奥深さがかいま見え、 時が経つほどに、 地域の特殊性が浮き彫りになる。 同じ京都のまちなかでさえ、 一筋違えば地域は変わる。 私たちの活動は、 そうした特殊性に立脚しながら、 次々につながり広がったものである。 まちづくりにおける専門家の役割は、 そうした地域の特殊性を丹念に拾い上げながら、 地域に応じた独自の手法を、 まちの人たちと共に作り上げていくことではないだろうか。 地域は、 それぞれに異なり、 それぞれに面白く、 難しい。 しかしその触感が、 何よりも楽しいのかもしれない。
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