参加型都市環境デザインをさぐる
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(株)都市緑地研究所
横山宜致
自治会が育む緑化デザイン
種から花を咲かせよう、 堺市大仙花咲プロジェクト
大阪府堺市
プランタートレリス
パートナーシップによる記念植樹
堺市花咲プロジェクトは、 民有地緑化に向けて、 校区内の公共敷地を利用し、 「住民が力を合わせて種から花苗を育て、 具体の緑化場所や植栽方法を考える活動」である。 大仙校区では、 大仙学区連合自治会を中心に1996年大仙地域環境安全委員会を発足させ、 その中の環境部会(愛称;大仙フラワークラブ)を主体に1997年2月から取り組んでいる。 堺市都市緑化基金の助成を基に「種から育てた花苗は地域で分配する」を基本に、 以下の三つの活動を行っている。 現在クラブ員は、 103名。 設立当初から発刊しているフラワータイムズは、 この8月で第30号を迎える。
●花を育てる(種まき〜管理〜緑化)
【場所;公園予定地】
みんなの力で種から花苗を育て、 協力して街角を修景する。
春と秋にそれぞれ3回、 計6回の種まきを開催。
●緑について学ぶ(講習会)
【場所;大仙ふれあいスクール】
花や緑の知識を深め、 参加者の交流を図る。
大人向け講座と子供向け講座を年4回程度開催。
●みんなで進めよう(イベント開催)
【場所;地域会館等】
緑化活動の輪を広げ、 住民誰もが参加できるイベント開催。
97年木製トレリス等作成、 98年パートナーシップ型記念植樹。
◇緑を育てる活動
現在1人当たり7プランター(28株)計1000基が校区内住宅接道部に飾られている。 7基の設置が困難な所では隣近所に2〜3基配布し、 管理委託する所も見られる。 配布後余った花苗は、 小中学校の歩道等に約100基のプランター設置と女子大や緑道に約2000株を植付け、 現在も地元班による水やり管理が行われている。
◇緑について学ぶ(講習会)
園芸技術の講習だけでなく、 街並み修景の視点も取り入れ、 人材育成に努めている。 育てる活動が停滞する冬季に開催することで、 継続性のある活動とし、 子供向け講座も開催。 予想以上に好評である。
◇みんなで進めよう(イベント開催)
木製プランターやトレリスづくりの手作りイベントの他、 98年度には府立女子大接道部に於いて、 住民と地元企業や行政とのパートナーシップに基づく記念植樹(延べ240人参加)に取り組み、 地域協働の都市緑化へと活動を拡げている。
■地域ぐるみの活動成果
○世代交流
幼児から高齢者まで参加し世代間の交流につながっている。 小中学校や大学の緑化、 事業者協力等を通して、 地域の交流が生まれ、 学校新聞を住民に回覧するなど学校や事業所がより身近になっている。
○生きがいづくり
みんなの管理を通して愛着度がアップし、 水やりを日課にする高齢者等、 参加者の生きがいづくりにも寄与している。
○組織間の連携強化
各団体と一緒に作業したり、 他団体に花苗を提供することで新たな交流が芽生えている。
○行政の意識変化
本活動のワークショップやパートナーシップによる活動成果を通して、 堺市都市緑化基金による新しい支援制度の創設が検討され始めた。
○まちづくりマインドの向上
修景を通して周りのゴミや糞が減り、 自主的に水やりを手伝ったり周囲を清掃する住民等、 地域をみんなで育成・管理しようとする意識が育ちつつある。
■今後の方向性
緑化場所を増やすと水やり等の管理負担が拡大するため、 一層地域全体で支え合う組織活動への転換を検討中。 現在連合自治会との合同イベントを企画中。
今後堺市都市緑化基金の助成が縮小されるため現在の花苗販売に加え、 記念植樹の企業協働の経験を基に地元企業や商店の協力参加を展開中。
まとめ:民有地緑化の実践
パートナーシップ型緑化の大半は、 公共性の高い場所で実施され、 結果として民有地緑化に結びついていない場合が多い。 民有地を緑化するためには、 参加者の満足度を基に個から地域へと広げていく視点が重要だ。
継続的な活動を通しての地域評価が、 住民の参加を促し、 デザイン性を育むこととなる。
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前田裕資
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