参加型都市環境デザインをさぐる
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(株)都市緑地研究所 横山宜致

学校ビオトープ (阪神間の事例を通して)

緑の基本計画事例調査から
大阪府豊中市

 

改行マーク学校ビオトープは、 本来学校に於ける環境整備の選択肢のひとつであるが、 これまでの接道重視の学校緑化と異なり、 子供達の環境学習や情操教育そして地域との共生や生物の一員である人間ひとり一人の暮らし方等、 総合学習的な面からも注目されている。 学校ビオトープの背景には、 市民の関心が高い地球環境や教育環境等の諸問題があり、 多様化する価値観の中で世代を越え地域合意しやすい面を有している。


◇学校ビオトープの成果

改行マーク阪神間を中心とする学校ビオトープの成果は、 概ね表のようにまとめられるが、 特徴的なのは、 教育委員会や公園緑地関係者を中心とした都市緑化と異なり、 教職員が主体に取り組み、 児童やPTA等の地域を巻き込んでいる点である。 特にビオトープ施設そのものよりもむしろ自力建設や地域のパートナーシップに伴う成果が大きく、 世代や立場を超えてものづくりを共有体験できる取り組みプロセスが重視されている。


◇ 成熟社会の街づくりに於ける学校の役割

改行マーク学校は、 市民の身近な公共施設であり、 日常のコミュニティ形成や子供たちの教育拠点として今後益々重要である。 特に小学校は、 コミュニティ単位における地域の中心施設であり、 災害時には身近な防災拠点としても機能する。 今後成熟社会にあって学校は、 地域の老子協働や親子協働の場として地域の連携拠点に位置付け、 市民の顔が見える快適な生活環境の形成に向けて、 学校を核にまちづくりに取り組む必要がある。

表 学校ビオトープの成果

計画的取り組みの成果全児童の効率良い参加と保護者や地域の幅広い参加
自力建設の成果愛着度の高い施設。
教職員と児童の思想と思い出の共有化。
最後までやり遂げた自信
ワークショップの成果ビオトープへの理解と認識。
様々な人達の意見の大切さ。
自然と接する作法の共有化
ビオトープ施設の成果飛来や移動してきた生きものを通して、 自然に周りの地域環境にも感心を持つ。
生息環境を維持することの大切さの自覚

◇学校ビオトープへの期待

改行マーク21世紀は、 限られた財源と開発事業の中で、 まちづくりは地縁型や修復型が中心となろう。 特に既成市街地では、 地域住民の合意の基に地域の再生更新と活性化の街づくりが課題となる。 すなわち地縁型街づくりとして合意と参加が得やすく、 地域で共有しデザインすることが可能なテーマは、 何かが重要であり、 学校ビオトープは、 市民参加の街づくりを推進する上で最も地域合意と連携が図りやすく汎用性に優れた施設づくりのひとつと言える。 したがって学校ビオトープを環境学習的側面だけでなく、 今後の少子化・高齢化の地域社会の中で学校という公共ストックの有効活用方策として、 地域のまちづくりの基点として捉える必要がある。 市域にほぼ均等分布する学校は、 地域で共有し市民が温かく見守る関係を構築できる可能性を持っており、 学校を基点に広域計画と地域や地区独自の方針を調整し、 市民参加のまちづくりを実践したい。 学校ビオトープは地域を見据えた「まちづくりの基点」として捉える必要がある。


まとめ:学校ビオトープをまちづくりの基点とする

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