参加型都市環境デザインをさぐる
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学芸出版社 前田裕資

企業が仕掛けた市民参加

女のまちづくり宣言・京都発
桂坂の会・女の目で見るまち研究会

 

改行マーク京阪電車のなかで「かなえくらぶ」の広告を見た。 ブロッサム・ガーデンというマンションの即日完売御礼広告である。 「女性モニターの意見を活かしたはじめてのマンション」「女性たちがすまいに願う『あったらいいな』を『きちんとかなえる』ことができたかと、 少しだけ胸をはっています」と書かれていた。

改行マーク同じ頃「おんなの目で大阪の街を創る会」の小冊子を買った。 こちらは大阪の交通機関のバリアフリー環境に焦点をあて、 女性のやさしい目でチェックしようという趣向だった。

改行マークこういう「女の目で」まちや住まいを見なおしてみようという試みの元祖が『女のまちづくり宣言・京都発』である。

改行マーク出版は1987年だから、 もう10年以上前になる。 当時、 桂坂で超高級住宅地の開発を手掛けていた西洋環境開発が、 さらにイメージを高めようと取り組んだプロジェクトだ。 担当のエライさんが、 「今は飛ぶように売れているが、 こんなことがいつまでも続くとは限らない。 10年後にも評価される質とイメージをつくるためにやっているのだ」と言われたのを今でも覚えている。

改行マークこのプロジェクトは西洋環境開発がCDIというシンクタンクとともに仕掛けた。 上野千鶴子や瀬戸内寂聴といった有名人によるシンポジウムを開催し、 その参加者の中から桂坂に住んでいる人や住んでみたい人を募り研究会を結成、 86年夏から87年夏にかけてタウンウォッチング(まちの良いところ、 悪いところ調査)を行った。

改行マークその成果をCDIと出版元となる私たちが本の形にまとめなおし、 西洋環境開発の支援のもと、 専門書としては大々的に売り出したものだ。

改行マーク大きな目次だけ拾うと「女が都市で生活してみる」「女が都市に出てみる」「女が都市で遊んでみる」「女が都市文化に参加する」「女が美しくなる、 都市も美しくなれ」とセゾングループ臭さが感じられるが、 細項目はなかなかしっかりしている。

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女のまちづくり宣言・表紙
改行マークたとえば「そこのけそこのけ車が通る京の道」「街へいきましょラッタッタ街へいくたびオットット自転車・ミニバイクは街の足」などだ。

改行マーク当時は「女の目」という視点も目新しく、 出版後、 東京方面を中心に具体的な動きにも繋がった。 すでに活動していた市民グループが同様の取り組みを始めたり、 行政が「女の目」でまちをチェックするグループを立ち上げたりした。 先に紹介したように今でも『女の目で』という視点は生き続けているのである。

改行マークしかし、 この本をつくった桂坂の会・女の目で見るまち研究会がその後活動を続けられたかというと、 ゼロである。 また仕掛けた西洋環境開発がその後の仕事にどれだけ役立てられたかと考えると、 これも極めて怪しい。 バブル崩壊の頃、 セゾングループでは「まちづくりは禁句になった」と聞いたことがあるが、 さもありなんと思った。

改行マーク桂坂の会は企業イメージのPRも一つの目的ということもあって、 おんぶにだっこのようにお世話されていた。 いずれ自立してもらおうなんて意図も仕掛け側には乏しく西洋が手を引けば立ち消えになるのは当然である。 残念なのはむしろ西洋環境開発が、 地道な手法として定着させ得なかったことだと私は思う。 冒頭に紹介した「かなえくらぶ」のように、 商品化の過程に少しでも組み込むことができれば「まちづくりは禁句」になっても生かすことができたのではないか。

改行マーク翻って参加ばやりの今日、 とりわけマスタープランへの市民参加のように、 市民の目にみえる成果をあげにくいプロジェクトに、 危うさを感じる。 行政が飽きてしまえばそれでおしまいにはならないだろうか。 出された問題にきっちりと答えてゆく地道な仕組みこそが参加のバックボーンとして是が非でも必要である。

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