学芸出版社 前田裕資
企業が仕掛けた市民参加
女のまちづくり宣言・京都発
桂坂の会・女の目で見るまち研究会
女のまちづくり宣言・表紙 |
当時は「女の目」という視点も目新しく、 出版後、 東京方面を中心に具体的な動きにも繋がった。 すでに活動していた市民グループが同様の取り組みを始めたり、 行政が「女の目」でまちをチェックするグループを立ち上げたりした。 先に紹介したように今でも『女の目で』という視点は生き続けているのである。
しかし、 この本をつくった桂坂の会・女の目で見るまち研究会がその後活動を続けられたかというと、 ゼロである。 また仕掛けた西洋環境開発がその後の仕事にどれだけ役立てられたかと考えると、 これも極めて怪しい。 バブル崩壊の頃、 セゾングループでは「まちづくりは禁句になった」と聞いたことがあるが、 さもありなんと思った。
桂坂の会は企業イメージのPRも一つの目的ということもあって、 おんぶにだっこのようにお世話されていた。 いずれ自立してもらおうなんて意図も仕掛け側には乏しく西洋が手を引けば立ち消えになるのは当然である。 残念なのはむしろ西洋環境開発が、 地道な手法として定着させ得なかったことだと私は思う。 冒頭に紹介した「かなえくらぶ」のように、 商品化の過程に少しでも組み込むことができれば「まちづくりは禁句」になっても生かすことができたのではないか。
翻って参加ばやりの今日、 とりわけマスタープランへの市民参加のように、 市民の目にみえる成果をあげにくいプロジェクトに、 危うさを感じる。 行政が飽きてしまえばそれでおしまいにはならないだろうか。 出された問題にきっちりと答えてゆく地道な仕組みこそが参加のバックボーンとして是が非でも必要である。