参加型都市環境デザインをさぐる
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近畿大学 久 隆浩

大阪下町に花咲いたまちかどワークショップ

俊徳道せせらぎ広場
大阪市生野区

 

はじめに

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俊徳道せせらぎ広場
改行マーク大阪市生野区では、 密集市街地の住環境改善をめざして、 南部地区約100haを住宅市街地総合整備事業(住市総)を用いて整備に入っているが、 その一環として「まちかど広場」の整備が行われつつある。 その整備第1号となったのが、 「俊徳道せせらぎ広場」であり、 ここでは計画当初からワークショップによって徹底した住民参加方式で計画づくりが行われた。


ほんとうにできるの

改行マークワークショップは全部で5回行った。 第1回目では、 先進例として世田谷の公園ワークショップの事例をビデオによって紹介した。 その際の住民の方々の反応は「これは世田谷ややからできたんやで。 生野ではこんなうまくいかへんわ」ということであった。 また、 議論のなかでも、 広場をつくると少年たちが夜間たむろして困る、 という意見など、 広場づくりについて批判的な意見が主流を占めていた。 実際、 既存の公園や広場では、 少年たちを中心とした行動が近隣住民の非難をあびていたのである。 このままの雰囲気ではどうなるものか、 われわれも心配したのは事実だが、 乗りかかった船、 いけるところまでやってみよう、 という気持ちで続けてみた。


やればできた

改行マーク第2回目はタウンウォッチング、 そして、 第3回目は、 数名ずつのグループに分かれて具体的な案作りをおこなった。 この段階になっても当初は、 柵で囲んで夜間には鍵をつけよう、 などという意見もみられたが、 徐々に積極的な利用について発言が多くなり、 ワークショップの雰囲気もよくなっていった。 各グループの案は一見ばらばらのようにみえたが、 ゾーニングなどに共通点も多く、 これらをいったん事務局が持ち帰って一案にまとめ、 次回に提案することになった。

改行マーク第4回目は事務局が提示した案に対してみんなが意見を述べ修正をかけていく形式でおこなわれた。 ここでも、 まだ、 管理についての不安が一部の方々から出てきたが、 「せっかくつくるのだから、 だめだだめだという消極意見ではなく、 子孫に残せるようないいものをつくろう」という意見がすぐ隣に住む方から出され、 それで場の雰囲気も積極的な意見交換に変わっていった。

改行マークそして、 第5回目は計画図面の最終確認。 この5回目にはじめて参加された方も何人かおられた。 その方からはやはり利用や管理面の不安が投げかけられたが、 それに対し継続的に参加されていた方が自主的に今までの経過を説明され、 問題をいかに乗り越えてきたを説得されたのである。 こうした住民意識の高まりもワークショップのひとつの成果であろう。


みんなで育む段階へ

改行マーク「俊徳道せせらぎ広場」という名前もワークショップで命名したものである。 広場がかつての俊徳街道に面していること、 そして小さなせせらぎを計画したこともあってこの名前に落ち着いた。 じつは、 デザインにおいても俊徳街道を意識して、 塀を和風にしたり手水舎を設けるなどの工夫を行っている。 また、 住民の方々の希望もあって、 広場の地下には防火水槽が設けられており、 それを手押しポンプによってせせらぎに水を流す工夫も取り入れられた。

改行マークさらに、 せっかく住民参加でつくったのだから、 その痕跡を広場に残そうということで、 塀にワークショップに継続的に参加した方々の手形を残そうということになった。 また、 竣工が4月ということもあって、 毎年植えられた桜の下で花見を催そう、 という計画も行われている。

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