舞岡公園は横浜市戸塚区・港南区に位置する都市公園で、 園内の水田や畑、 ため池、 雑木林などの自然環境を市民団体「舞岡公園を育む会」が保全している事例として、 既に広く紹介されているところである。
「育む会」の活動は多岐にわたる。 谷戸の中心となる水田の耕作にはじまり、 ため池の管理、 雑木林の管理、 炭焼き、 稲ワラ細工などの伝統文化の継承、 そして収穫を祝うお祭りなどだ。 谷戸の自然とそれに育まれる文化を守り育てることを軸として、 種々の活動を展開している。
こうした活動内容は、 「育む会」に設置された代表委員会(11名)によって決定される。 そして実際の作業指導は、 一定の作業経験や知識を有すると認められた指導員(約30名)によって行われる。 これはまるで、 ムラの「寄り合い」や篤農家による農業指導のようだ。 こうしてみると、 「育む会」で行われていることは、 かつて農耕を中心として形成されてきたムラの共同体の再生、 換言すれば、 谷戸の自然を中心とした現代都市における新しいコミュニティの創造であるといえるのではないだろうか。
またこのコミュニティは、 自らを存続させていくための試みも行っている。 それは市民を対象としてカリキュラム制による指導員の養成を行っていることだ。 こうした市民参加の上では指導員などの人材が重要な要素になることは論をまたない。 従来のムラの共同体では地元住民の中から指導者的人材を選出していたが、 「育む会」では積極的に新しい「血」を入れていこうとしているのだ。 これも、 現代的なコミュニティ創造のあり方のひとつだといえるだろう。
これまで「育む会」の活動は市民による都市公園の自然環境の保全事例として広く紹介されてきたが、 実はコミュニティの崩壊が危惧される現代において新しいコミュニティのあり方を提示したこと、 それが「育む会」の大きな意義ではないだろうか。
(株)スペースビジョン研究所 丸橋裕一
谷戸の保全を通じたコミュニティの創造
舞岡公園を育む会
横浜市
稲穂が実る谷戸の風景
手作業でヒエを抜き取る みんなで、 少しずつ
異世代間交流もコミュニティ形成の重要な要素
◆参加のデザイン・コンセプト
谷戸の自然がコミュニティを育み、 コミュニティが谷戸をデザインする。
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