参加型都市環境デザインをさぐる
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(株)スペースビジョン研究所 丸橋裕一

森の中で自主性を育む

河辺いきものの森事業
滋賀県八日市市

 

改行マーク琵琶湖に注ぐ1級河川のひとつ、 愛知川を市境の一部とする八日市市では、 唯一まとまった面積で残された河辺林を保全すべく、 平成11年度から「河辺いきものの森事業」を展開している。

改行マーク現在事業地は樹木やタケが生え放題という状況だが、 市では平成10年度から市民の参加により森林の整備を始めている。 活動する市民は、 市の呼びかけによって設立した「遊林会」を中心に、 地元の各種団体や市内高校の生徒など非常に多様だ。 これら団体の間には実際の活動における「垣根」は無いに等しく、 どの団体がどこでどの作業をするなどという割り振りは行われない。 当日の作業内容は大枠が決められるだけで、 各人が自由に作業を選択できる。 これでは人気のない作業に人が集まらず、 いつまでたってもその作業が進まないのではないかと考えられるが、 毎回そんなことにはならない。 それは、 「誰もいないのだったら自分がやってやろう」という人が必ず出るからだ。

改行マークまた事業地の管理を主目的としてつくられた「遊林会」でさえも、 企画・運営部会などの組織づくりを計画的に行う予定はない。 これは通常こうした組織が、 実際の活動に注ぐエネルギーよりも、 組織そのものの維持により大きなエネルギーを必要とすることがしばしばあるとの認識からだ。 では今後誰が活動のマネジメントを行うのか。 事業地ではこれさえも自主性に任せられており、 現在活動を通じて企画・運営を行う核となる人物が複数育まれつつあるところである。

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やりたいことをやりたいペースで
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時には森の中で音楽を楽しみながら
改行マークこうした自主的な活動を支えているものは、 とにかく作業を「楽しもう」とするスタイルにあるといえよう。 毎回作業に当たっては、 ノルマや規則に縛られず、 自分のペースで作業を楽しみましょうという点が強調される。 楽しいからこそ自発的に参加でき、 作業の継続性も期待できる。 また小学校の子どもたちから90歳を超える人まで参加しており、 作業を通じた異世代間交流も盛んだ。 これは知識や感性の交流が図られることに加え、 良い意味での緊張感の発生にも寄与しており、 それが「だらだらのマイペース」ではなく、 「ピリッとしたマイペース」環境を生み出している。

改行マークこうして河辺林は、 楽しさを味わいながら、 大人や子供を問わず「自分で考えて何かをする」意識を育み、 実践する場となっている。 それは河辺林という森の発展を促すとともに、 自分自身の「市民」意識の発展を促しているともいえるだろう。


参加のデザイン・コンセプト

改行マーク楽しさから生まれる自主性と自己発展のデザイン。

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