参加型都市環境デザインをさぐる
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(株)スペースビジョン研究所 長谷川利恵子
都市民といっしょに守る 「日本人のこころのふるさと」
棚田オーナー制度 奈良県明日香村 |
明日香村は、 日本人のこころのふるさとと言われ、 美しい棚田の広がる風景が守られてきた。 これからも明日香の貴重な歴史的景観を保存する支援策として、 都市民に稲作づくりを体験見学してもらう「棚田オーナー制度」が展開されている。
他にも「うまし酒オーナー」、 「さつまいも堀りオーナー」、 「土つき野菜オーナー」、 「采女の宅急便」などのオーナー制を実施しているが、 特に棚田オーナー制度は人気があり、 高い評価を得ている。
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田植えの風景
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美しい棚田の風景を守るオーナー制度は、 高知県梼原町、 長野県更埴市など全国各地でも取り組みが行われているが、 明日香村の棚田オーナー制度は、 地元農家の参加により、 オーナーとの交流が活発に行われている地域密着型の棚田オーナー制度である。
●棚田オーナーの気持ち
明日香村は、 「日本人のこころのふるさと」。 私にとっても第2のふるさと。 特急は停まるし、 大阪へも近いから、 ちょっとそこまで、 実家に帰るような気分で、 「明日香に帰る」。
農作業を通じて自然と触れ合ったり、 明日香村の人々とわいわいやったするのはとても楽しい。 明日香の風景に浸っているととっても落ち着いた気分になる。
これからも「棚田オーナー」とか明日香に関わるいろんな活動を積極的に続けて行きたいし、 できれば、 明日香を終の棲み家にしたいと思っている。
●農家のおじさんのつぶやき
明日香村は、 村全体が「歴史的風土特別保存地区」に指定されて、 明日香の風景が守られてきた。 農地を造成したり、 家を建てたりする度にいろいろと手続きがめんどくさい。 バブルの頃は、 農地を売って豊かに暮らしたいと思ったこともあったが、 明日香村ではそうもいかず、 ずっと農家を続けてきた。 今となっては、 それでよかったと思っている。 でも、 最近は高齢化も進んで農業を続けられない人が多い。 人に貸したり、 耕作を放棄したり、 明日香の豊かな田園風景を守れなくなってきている。
そこで、 村が「棚田オーナー制」を始めて、 都会からたくさんの人が耕作しに来るようになって助かっている。 農作業をしながら、 都会者の話を聞いたり、 いっしょに酒を飲んだりと楽しいが、 なにぶん高齢なので、 棚田オーナーのお世話をするのも疲れてきた。 村の若者も参加すればいいが、 なかなか忙しい。
最近は、 都会者が大きな顔をして村の祭りに参加している。 都会者を農業の後継者として育てていこうという考えもあるが、 代々まで農地を守ってくれるとは思えないし、 都会者に老後をみてもらえるわけでもない。
棚田オーナー制は、 楽しい反面、 少し疲れた。
棚田オーナー制度の概要
- 事業主体:(財)明日香村地域振興公社(愛称:あすか夢耕社)(田園景観の保全と「農」による地域振興の体制づくりを先導する村長直属の「郷づくり担当」セクションが前身)。
- 募集区画:約50区画、 1区画100m2、 4万円。
明日香村稲淵地区の農地(一部古都保存の買い入れ地を利用)
- 応募区画:抽選倍率5〜6倍、 継続利用可。
- 関連行事:明日香村の様々な行事(お綱掛けなど)に参加できる。
◆参加のデザイン・コンセプト:
風景としての農、 レクリエーションとしての農。 住民が守る地域景観、 参加交流によって生まれる+α(−α)。
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