関西大学 丸茂弘幸
個別デザインの集列的参加
関大前ストリート
大阪府吹田市
眠ったようにひっそりとした夏休み中の関大前ストリート。 |
変転きわまりない建物や看板のデザインに特定のルールがあるわけではない。 集客という共通の目標に向かってそれぞれに努力し競争しているだけだ。 いきおい目立つということが重要になるが、 喫茶店など比較的オシャレに上品に目立とうとする店もあれば、 ゲームセンターなどのようにどぎつくなりふり構わず目立とうとしているのもある。 いずれにしてもR・ヴェンチューリのいう「装飾された小屋」である。 裸にしてみれば小屋にすぎないものが、 思い思いの装飾を身に纏って関大前ストリートという共通の場に立ち並んでいる。
自ら主体的に選んだ姿形で共通の場に並ぶ、 ということは参加の最も基本的な形態のひとつであろう。 こうした参加を<個別デザインの集列的参加>と呼ぶことにしよう。 「服装は問いません」という会合やパーティに参加するようなものである。 ここでのルールはただ一つ、 互いの服装に文句は付ないということである。 <集列的参加>というのはそれが<協調的参加>でも<共同的参加>でもないという意味である。
集列的な参加者は自らのデザインの自由を享受する代償として他者もまた自由であることに甘んじなければならない。 これに耐えられなければ協調的、 あるいは共同的参加に向かうほかはない。 その場合には他者のデザインに関与する程度に応じて自らのデザインも拘束されることになる。
個別デザインの集列的参加などというと大げさであるが、 要は普通のまちである。 雑然とした普通のまちにも意外性や気安さ、 変化への適応性など、 それなりの良さはある。 関大前ストリートの景観が大学の門前町にふさわしいかどうかという議論もあるようだが、 今のところ集列的参加から先に進みそうな気配はない。