南芦屋浜の埋め立て地に、 震災復興公営住宅814戸が建てられた。 ここに移り住む人の多くは、 震災後、 仮設住宅に暮らす高齢者で、 団地に住んだこともない人たちである。 恒久住宅を早期に大量に供給することで、 震災復興公営住宅の目標は達せられても、 こうした人々が生活を取り戻していくためには、 新しい人や場所との関わりを結び直し、 コミュニティを育てていくことが必要である。 そうしたコミュニティ形成を支援するまちづくりとして「コミュニティ&アート計画」が進められた。
コミュニティ&アート計画では、 入居前に月1回集って共用空間の使い方やコミュニティ形成などを話し合う暮らしのワークショップと、 居住者の出会いやいろいろな活動を生み出す場をつくるアートワークの2つが、 大きな柱であった。
だんだん畑は、 このコミュニティ&アート計画のなかで生まれた。 ランドスケープ計画でナチュラルコモンとされていた空間づくりとして、 住民が花壇や菜園をつくっていくことが作品の一部となるアートワークが計画され、 「だんだん畑」ができた。
入居後、 菜園づくりに心得のある住民が中心になって、 ボランティアの支援も得て、 花や野菜を育ててきた。 住民の手による花や野菜が、 だんだん畑の風景をつくりだしている。 そして、 収穫したえんどうやさつまいもを団地のみんなで楽しむことで、 住民どうしの出会いも生みだしている。
公営住宅団地の管理は住民の自主管理とはいうものの、 これまでは住み手が自由に使えるオープンスペースはない。 それでも古い団地を歩くと、 勝手に住棟周りのすき間に植えた緑や花が生活を彩っていた。 ここでは、 デザインされ創り込まれた緑地ではなく、 住民・アーティスト・設計者の協働によるアートワークとして、 団地の中に自由空間をつくりだした。
大阪大学 小浦久子
住み手が育む共用空間の風景
だんだん畑:南芦屋浜コミュニティ&アート計画
兵庫県芦屋市
団地のなかのだんだん畑
だんだん畑の緑の中で遊ぶ
サツマイモの苗の植え付け作業
◆参加のデザイン・コンセプト
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