ギフチョウというチョウは大変きれいでかわいいチョウチョです。 このチョウチョは、 春先に林の中を飛んで雌を探します。 雌を見つけるとその雌と交尾し、 自分の精子を雌の体内に入れます。 そこまでは当たり前なのですが、 精子をいれた後、 雄は生殖腺の付属腺から別の粘液を出して、 雌の性器の中に入れてしまうのです。
この粘液は間もなく固まって、 絶対抜けない栓のようになり、 雌の生殖器を塞いでしまいます。 ですからこれは貞操帯のようなものです。 雌はその先どんなにいい雄が来ても何もできないのです。 なぜそういう意地の悪いことをするのかということです。
さて、 雄が草に止まって合図をすると、 雌がお腹を曲げて雄の長い腹の根元のところに自分の腹の先をつけます。 というのも雌も雄も性器は腹の先端にあるのですが、 雄はそこから精子を出して、 腹の根元のところにある第二の交尾器官に自分の精子を移します。 雌はそこに自分の腹の先をあてがって、 雄から精子をもらうわけです。
その時、 精子は簡単に渡せるはずなんですが、 トンボの雄は時間をかけて何かごちゃごちゃやっています。 なかなか渡さないで、 10分も20分もかかるわけです。 どうしてだろうということで、 その間ずっと双眼鏡で覗いていた、 かなり趣味の悪い人がいたんです。
そうして解ったのは、 雄は自分の第二交尾器の中にある毛の生えたスプーンのようなもので、 雌の性器の中を調べているということでした。 自分がつかまえる前に、 この雌が他の雄と交尾して精子を貰っていないかどうかを調べているらしいのです。 前の雄から貰った精子がまだそこにあると、 その毛の生えたスプーンのようなもので、 全部掻き取ってきれいにしてしまいます。 その後、 初めて自分の精子を渡すんです。
その時に雄は不信感が募るんでしょう。 この雌は、 他の雄と交尾をしたくせに、 自分が呼んだらまた来た。 これは浮気者に違いない。 今、 自分が離したら、 何をするかわからない。 だから、 つかまえたまま連れて歩くのです。 それが秋になると、 いっぱい空を飛んでいるのです。
昔は、 卵を産むのは雌で、 しかもか弱いものですから、 雄がちゃんとつかまえて保護していると言われていたわけです。 卵を産むときは水の中へ入りますから、 きちんとつかまえておいて、 卵を産み終わったら上げて離してやるというわけです。 つまり雄は騎士道精神に富んだ存在なのだということになっていたのですが、 調べていくととんでもない話で、 単に雄の雌に対する不信感に過ぎないことが解ったのです。 仲が良いどころではなく、 不信感がいっぱい空を飛んでいるわけです。
そういうふうに見ていくと、 動物たちの世界は雄と雌が力を合わせてといった美しいものではないということが解ってきました。
次々と出てきた変な行動
蝶と貞操帯
たとえばチョウチョでも変な話が出てきました。トンボの交尾
トンボも変な行動をすることが解ってきました。 トンボは秋になると、 二匹で繋がって飛んでいます。 仲が良さそうに飛んでいますが、 あれは雄が腹の先にある鈎で雌の首を掴んで飛んでいるのです。
このページへのご意見はJUDIへ
(C) by 都市環境デザイン会議関西ブロック JUDI Kansai
学芸出版社ホームページへ