「開発か保全かどちらかしかない、 人間がやることは突き詰めれば開発以外にはない、 だから我々都市デザインや建築家の活動で保存とか保全というのはありえない」とまで言われたものです。 その時に私はいつも、 「保全と開発はきっぱり分かれるものではなく、 何を保全して、 どこを壊して開発するかが問題なのだ。 それを我々は計画の視野に入れるべきではないか」ということを、 再三申し上げてきました。
さて今度は「全て保全だ」と言い出す人が出てきて、 こうなると「保存、 保存」と言ってきた私は、 「いや開発も大事ではないか」と言いたくなるわけです。
私がなぜ「保存」を言わなければならなかったかというと、 良いものが壊れていく一方で、 いかにも軽々しい木造のモルタル塗りの建物が残ったり、 石造の明治建築を壊して、 ガラス張りの数十年ももたないような建物を建てることが多かったからです。 ですが、 全て保存でいいかというと、 話しは違います。
日本にも全て保存したいような立派な場所もあるのですが、 ヨーロッパのまちと比べても今の日本の都市環境にはこのまま保存したくなるような良い環境はほとんどありません。 正直に言えば、 戦後の応急復興のような所がかなりの面積を占めていて、 これを保存するのでは、 日本人は幸せになれないだろうと思います。
ですから、 どういうものをどう選んでどう壊すのかが課題であり、 また次につくるものを資源保全型の、 しかも景観も良くするようなものにしていくことこそが、 今後の日本の課題ではないかと思うのです。
第2分科会ではこのような課題について、 興味深い議論が期待されます。
開発と保存と
保全型の都市デザインは大きな課題です。 もうつくってはいけないと単純に言われる方もおられるようですが、 この意見に対しては、 私は感慨深いものがあります。 私は二十数年前、 大学院の時に歴史的環境の保全や環境保全に取り組み始めたのですが、 その時には大変な反発がありました。
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