緑地で見る関東と関西の都市構造
自然が規定している関西都市圏の構造を、大西文秀(1999)「集水域を基調とした環境容量の概念形成と定量化および変動構造に関する基礎的研究」(大阪府立大学学位請求論文)から引用してお話しようと思います。
図1 近畿圏と首都圏の森林面積率 大西文秀(1999) :「集水域を基調とした環境容量の概念形成と定量化および変動構造に関する基礎的研究」、大阪府立大学学位請求論文、からの引用 |
この図で、 関西圏の森林の少ないところ、 すなわち都市化されたところを見てみると、 神戸を中心にしたクラスターと大阪を中心にしたクラスター、 滋賀・京都を中心にしたクラスター、 和歌山のクラスターというように、 クラスター状に分割されていることがよく分かります。 それに対して関東圏は全域50キロ圏までほとんど森林のないエリアが広がっています。
これは、 地形のもっている構造でもあるわけです。 関西圏は、 大阪平野を取り囲む三山系から六甲山系にいたるまで、 大地形が発達しています。 そのかわり大阪には上町台地しかないように、 微地形があまり発達していません。 それに対して関東は微地形、 小起伏地はたくさんありますが、 大地形は森林面積率60%以上のところまでいかないとありません。
家康が関西ではなく関東に立地した、 あるいは明治政府が関東に首都を構えたのは、 都市の拡大容量から考えると当然の結果でしょう。 関東平野に立地する方が、 都市の拡大の可能性がはるかに大きかったわけです。 関西は、 京都であろうと大阪であろうと、 都市の容量が地形に強く規制されていることが、 森林の分布を見ても分かると思います。
図3は気候帯と植物の関係を示したものです。
「近畿から東北南部の本州内陸部」と一緒にされているように、 関東と関西はほぼ一緒で、 暖帯常緑広葉樹林帯に位置しています。 関西の潜在植生としてはカシ林(照葉樹林)です。
話しが少しそれますが、 ヨーロッパのビオトープは、 ほとんど冷温帯に位置しています。 暖温帯での例はありません。 このビオトープを日本に持ってくるにはブナ林帯とカシ林帯の違いを考えておかないと駄目なのです。 また日本は細長いため、 亜熱帯から暖温帯、 冷温帯、 そして亜寒帯につながっています。 このあたりのことをビオトープ空間をどう作るかという時に考えなければいけません。
図5 近畿圏と首都圏の人口密度 大西文秀(1999) :「集水域を基調とした環境容量の概念形成と定量化および変動構造に関する基礎的研究」、大阪府立大学学位請求論文、からの引用 |
図5は人口の分布を示しています。 関東圏の人口の広がりは非常に大きく、 関西圏は小さくまとまっています。 都市の圏域の広がりは、 自然の構造に規定され、 影響されているわけです。