都市と自然の距離
「広域計画としての緑地計画や交通計画と土地利用が環境共生とどう整合するのか」という二点目の課題について、 都市そのものを扱うと他の方と交錯してしまいます。 そこで、 都市の縁辺部を共生という視点から考えてみたいと思います。
図12 都市化による二次自然地の消失 |
歴史を振り返れば、 都市は河口近くにつくられた港で成立していることが分かります。 大阪もまさにその例です。 築港のところに成立したのではなく、 大川の内部に入ったところで都市が形成されました。
このようにしてできた都市が拡大してしまうと、 どうなるか。 我々は「自然との共生」と言いますが、 自然はやはり脅威なのです。 だから都市が拡大し、 緩衝地帯となっていた渚地域や農村地帯がなくなり、 直接都市が自然へ攻め込んでいくようなものですから、 大規模な防衛システムが必要になります。 図12に示しますように、 これがダムであり防波堤です。 都市の拡大によって自然との距離が近くなりましたが、 その結果、 際(きわ)に大きな断絶が発生しています。
したがって、 ヘテロな状態を持つ流域の中で都市の自立性を高めていこうという先ほどの考え方に立てば、 この防衛システムを解体し、 二次自然域のような形へ戻すことが必要です。 昔は都市と自然の間にそういったバッファーがあり、 生態学的で言うエコトーンという移行帯があったわけです。 そこが生物的にも一番多様性があり、 人間の生活上も物見遊山ができる豊かなレクレーションの場になっていました。
ですから、 環境共生型の都市デザインの時代にあっては、 この二次自然域の計画論を我々は持たなければならないのです。 言い換えれば、 都市計画の欠点は、 ルーラルプランニング、 田園地域の計画論をもっていなかったことだと私は思います。
農水省が都市計画法の線引きに対抗して作った農振農用地という区域指定があります。 残念なことに農振農用地は農地そのものの保存は考えていても、 土地利用政策は考えていません。 これから都市の自立性を考えていくためには、 一つの圏域において、 森林計画と農村計画、 都市計画をどうやって一体的に計画論に乗せていくかが一番大事なポイントです。