環境共生型都市デザインの世界
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時代の転換点にあたって

奥貫

猛反省から出発すべき

 環境共生というキーワードでこれからの都市づくりを考えるには、 私自身も含めてこれまでの都市行政や都市開発に関わってきたすべての人は、 まず猛反省する必要があります。 正しいと信じて都市整備を進めてきたのですが、 結果的にそうではなかった。 そうした自覚に立って議論しないと、 環境共生という言葉が広まるだけで、 また10年もすると忘れ去られてしまうような一過性の議論になりかねません。

 世紀の変わり目だからと特別に意識して言うわけではないのですが、 環境共生の概念を取り入れたこれからのまちづくりを、 日本の都市づくりの新しいスタート私は考えたいのです。

 ある人が、 「都市は、 本来、 200年から300年かけてつくるべきものなのに、 日本は戦後50年の極めて短い時間で都市をつくってしまった。 極めて安易なまちづくりをしてきたわけで、 むしろこれから先、 現在ある都市をもう一度壊してつくり直すチャンスが残されていると考えたほうがよい」と言っていましたが、 インフラ整備にしても建築物一つひとつの意匠にしても、 安易につくってきたことに対する反省にたって、 これからの街づくりを考えていくべきです。

 建築家の岩村和夫さんが面白いことを言っています。 今日の環境共生ブームに対して、 「ドイツは環境共生を社会化している。 アメリカは商業化している。 そして日本はそれを風俗化している」。 そういうことにならないように、 環境共生をこれからの街づくりの根元的なテーマとして位置づけていきたい。

国見的な発想が必要

 2年ほど前に琵琶湖岸を中心に空撮する機会がありました。 ヘリコプターから滋賀の県土を俯瞰してみて、 私は「国見」という古い言葉を思い出しました。 「国見」とは、 かつては、 農家の人たちが秋の豊作を願って春先に行う祝い行事だったと言います。 それがある時期から、 その地域を統治する人が、 民の幸福を願うとともに自らの権勢を誇示する政治的な行事になったようです。

 都市、 地域の計画に関わる人々、 特に行政の担当者は、 現代の「国見」的感覚で俯瞰的に都市や地域の将来像を考える必要があると考えます。 GISなどを含めてデータは比較的簡単に入手できるようになりました。 もちろんそうしたデータに基づいて基礎的な地域特性をまず把握しなければなりませんが、 俯瞰的に地域を見る「国見」とは、 ただ広く、 遠くが見えるだけではなく、 近い未来が見えるのです。 ヘリで上空から俯瞰した時に私はそのことに気づきました。 この地域はどの方向に都市化していくかが、 手に取るようにわかるのです。

 そのことはデータによって実証もできますが、 これからは、 広域的視点や全体的視点から都市や地域の有り様を考えるという基本姿勢に立って地域を見る、 そこから環境共生のまちづくりがスタートするのではないでしょうか。

風景条例の現在

 土井先生が言われた「ふるさと滋賀の風景を守り育てる条例」に基づく滋賀県の景観行政について補足させて下さい。

 滋賀県は、 琵琶湖を中心に固有の風景を県レベルとして保全してくために、 昭和61(1986)年、 全国に先駆けて、 都道府県として最初に条例化しました。 琵琶湖岸及び主要な道路、 河川を対象として景観形成地域を指定し、 開発行為に一定の歯止めをかけると同時に、 集落単位で自主的に景観形成協定を結んで活動する地域に対して、 技術的あるいは資金的な支援をしながら、 県土全体の風景を次の時代に引き継いでいく、 そういう景観施策をとり、 成果をあげてきました。 その上で、 平成11年度に「淡海風景プラン」を策定し、 今後の景観行政のガイドラインとして新たな展開を図ろうとしています。

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