|
図1 ヴェネツィア・サンマルコ広場からの景色
|
|
私は街を見るとき、 いつもその街の空と水と土の色を見るようにしています。 人間は色彩から場所を確認していくものだからです。 80%の認識力は視覚から来て、 あとは匂いや音、 皮膚の感触など五感で認識していきます。 ですから環境の理解はビジュアルなものだけではなく、 人間の持つ機能を最大限に発揮して、 意識しながら環境を認識していく作業が心に入って、 「気持ちがいい」とか「快適だ」という言葉になっていくのです。
|
|
図2 サンマルコ広場から見た夕焼け
|
|
私はいつも「自然の色は知りたい色を全部教えてくれる」と言うのですが、 そうすると「その色はどうやって出すのですか」という質問が出てくることがあります。 質問する人は自然の色を固定できると思っているのですが、 自然の一瞬の色というのは人間の目にしか残らないんです。 それをしようとした人たちがゴッホやルノアールなどの画家たちでで、 自然の美しい色をどうしたら永遠に残せるかと戦っているわけです。
|
|
図3 ヨーロッパの色彩感覚(ヴェネツィアの運河から見た建物壁面)
|
|
日本ではあわせにくい建物のブルーや赤、 黄色も気になりません。 色彩は自分が関心を持った瞬間からそれが絵になって、 景色の中から意味を伝えてきます。 私はこの壁の色を綺麗だと思ったので写真に撮ったのです。
|
|
図4 ヴェネツィアの運河(橋の上からの俯瞰)
|
|
河川をよく見ると、 この運河は腐っているような色合いなんです。 それなのに、 黒と赤のゴンドラの色合いとなぜ良く合うんだろうと思います。 近くにはカルロ・スカルパの美術館もありますし、 やはり世界のアーキテクトが実力を発揮できる街なんでしょう。 おまけにこの街はバリアフリーにもなっておらず、 段差がいっぱいあります。 大変でもお年寄りは美しい街から去りがたいようで、 よくお年寄りが街を歩く姿を見かけます。
|
|
図5 ヴェネツィアン・グラス
|
|
この街の空や水の色から、 ヴェネツィアン・グラスという色彩が生まれてきました。 ひとつの文化はいろんなものに波及していくようで、 彼らが固定化したかった色は、 やはりそこにある風土から生まれたのではないかと思います。
|