環境共生型都市デザインの世界
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日本のまちづくりが抱える問題について

藤田

 案外みなさんはご存知ないのですが、 日本には約650の都市があります。 私はまちづくりの話をするためそのうちの約420の街を回ったんです。 新しい街を訪ねるとき、 私が必ず知っておきたいことは、 その街の商業地面積の比率と固定資産税や住民税のデータです。 たいていの都市では商業地域は全都市計画区域の3%ぐらい、 なのに固定資産税の50%は商業地からあがっています。 ちなみに他の区域の固定資産税の内訳を言うと、 住宅地20%、 工業地15〜17%、 農地、 山林、 白地区域のほとんどが数%です。

 ところがまちづくりの話になると、 商業地にお金をかけようとしない。 「儲けているところに公共のお金をつぎ込むぐらいなら、 農業や林業に投資しろ」という論調になるのです。 しかし、 多くの税金はどこから出てくるかを考えると、 商業地がダメになったらその自治体自体がダメになるんです。 田舎の村の駅前にチョロチョロとある商店街でも、 その村の税収の60%ぐらいを収めています。

 しかしまちづくりに携わる人、 多くは行政の人ですが、 彼らにはそうした認識はほとんどありません。 特に、 地方では議員さんは商業地に投資することを天下の悪行かのように思っている人が多い。 ですから、 私はまちづくりの話をするときは、 まずこうしたデータを示して「商業地に力をいれないと大変なことになりますよ」と言うようにしています。

 税金とまちづくりについてもう一つ申し上げますと、 例えば、 今京都では町家が消えていくと問題になっています。 しかし、 町家を相続した場合、 相続税を払うために土地を売らないとしょうがない人がたくさんいるんです。 また、 その土地を買った人も町なかではもう平屋の建物を建ててもやっていけないから、 高いマンションを建てることになる。 我々も京都の景観を残そうといろいろ運動したのですが、 結局は相続税を何とかしなければ景観保全にはつながらないのです。 税金は我々が踏み込むべき仕事ではないかもしれませんが、 しかるべき筋が働きかけていただきたいと思います。

 また日本と違って海外のまちづくりでは宗教が大きな力を持っています。 ヨーロッパでは教会を中心に昔ながらの景観が保たれています。 そうした求心力のあるものが日本にないことが今のまちづくりに災いしていると感じます。

 次に環境とまちづくりについて申し上げます。

 この間、 建設省の道路関係の人に、 高速道路を作った際の興味深い話を聞きました。 名神や東名を作ったときは何の問題もなかったのに、 中央道を作ったとき、 生態系を変化させるようなことが起こったんだそうです。

 道路を作るとき、 できるだけ自然環境を破壊しないよう、 土盛り式で作ってカルフォルニアウィーピンググラスという草を植えたんです。 それを植えたことで1年で法面は固まったのですが、 外来種を植えたために桔梗や菜の花、 ススキが全滅して、 ブタクサやセイタカアワダチソウだらけになってしまったといいます。 その上、 道路を伝って東側の虫がどっと関西に入ってくるようになってしまいました。 その体験から、 道路は地方の業者ごとにぶつ切りで発注するようにして、 高架橋やトンネルも出来るだけ多く作るようになったということです。

 道路を作る際には生態系が変わらないよう配慮しておかないと、 日本中がダメになるというお話でした。

 まちづくりと自然環境への配慮ということで言うと、 できた後のことばかりが話題になりますが、 工事中にも気を配ることが必要だということも付け加えておきたいと思います。

 ドイツのベルリンが、 今大改造をしていますが、 その際CO2の発生を抑制するため、 大型車両の市内乗り入れを禁止して、 昔ながらの運河を使って資材を運んでいます。 そういうことは日本人でも思いつくかもしれませんが、 彼らがスゴイのはPRして街の話題にしてことです。

 世界的なコンペを開いたり、 歴史的な建物をリニューアルして議事堂にしたり、 まちづくりそのものをイベントにしています。 工事中に環境破壊をしない研究会や学会もしょっちゅう開かれています。 ですから、 まちづくりの現場を見るため、 工事期間中(約20年間)に2億人がベルリンを訪れる計画だということです。 日本人は工事中の配慮というと、 せいぜい「ご迷惑をおかけします」という看板ぐらいですが、 工事そのものがイベントになるんだという発想ができないのですね。

 こういうことを言ってもなかなか分かってくれない人も多いのですが、 どんどん言うことで、 少しずつでも世の中が変わって欲しいと思います。

司会

 ベルリンの話で思い出したのですが、 たしかフランスでもミッテラン大統領の時に行われたパリの十大プロジェクトも、 大々的に観光に利用していました。 全く、 藤田先生のおっしゃるとおりです。 では最後に、 後藤先生、 お願いします。

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